3人目がやってきた!

第33回 シュンとのおっぱい生活

おっぱいの飲み方にも個性がある

ひいおばあちゃん
ひいばあちゃん93歳、シュン1歳。会うたび「かわいいねえ、かわいいねえ」とひいばあちゃん
笛
シュン、笛を吹く? 食べる?

1歳を過ぎたシュンは、離乳食もだいぶ進み、生もの以外は、ほとんど何でも食べる。最近、おかゆでなくふつうに炊いたごはんを食べるようになって、シュンのごはんの用意がとても楽ちんになった。食べる量も一人前。今日はカレーライスをおかわりした。離乳(おっぱいを飲まなくなる)の日も遠くはないのかもしれない。ちょっとさびしい気もする。

ナツとアチャのときは、おっぱいに苦労した。2550グラムと小さく生まれたナツは、その後の成長もゆっくりで、彼女にたくさんのおっぱいは必要なかった。飲み残されたおっぱいは乳腺に溜まり、詰まってしこりになって痛んだ。出すぎるおっぱいを搾乳したりもした。とにかく毎日おっぱいと格闘している気分だった。

アチャのときは、アチャが保育園に入園してすぐ、私が乳腺炎になってしまった。昼間飲ませなくなったのが原因だった。詰まった乳腺が炎症を起こし、熱が出る。おっぱいはパンパンに腫れて、痛くて大変だった。

横抱き、縦抱き、ラグビーボール抱き

観覧車の中
以前に比べると授乳室のある施設が増え、外出時の授乳が楽になった気がします。これは観覧車の中。飲んでいるのはアチャ2カ月
自動車の車内
自動車の車内はプライバシーが保たれるので授乳しやすい。安全のため停車中にしましょう
添い乳
添い乳(添い寝しながら授乳)は、夜中の授乳を楽にしてくれます。ナツも飲みたいのかな

おっぱいにトラブルがあると、そのたびに助産院に駆け込み、助産師さんにマッサージをしてもらった。マッサージしてもらうと、しこりがなくなって、痛みもやわらぐ。マッサージしてもらいながら、おっぱいや育児の悩みごとをあれこれと尋ねたり、食事や生活上のアドバイスをもらったりできるのもうれしかった。

私の場合は、出過ぎるタイプのおっぱいだったので、おっぱいが余計に作られないように、食べ物、飲み物を少し控えること、乳製品や動物性脂肪は、おっぱいの詰まる原因になりやすいので控えること、粗食、和食中心の低カロリーの食事がおっぱいにはいいことなど、いろいろ教えてもらった。

助産師さん「授乳中はお腹が空くからつい甘いものがほしくなるけど、ケーキより和菓子、和菓子よりおせんべいにしてね」
ヨ  ー  コ「はーい」

乳腺はいくつもあるので、どの腺からもまんべんなく飲ませるようするために、抱き方にも工夫するとよい。教えてもらっていろいろ試してみた。縦抱き(赤ちゃんを膝にまたがらせて抱く)、ラグビーボール抱き(ラグビーボールを抱えるようなかんじで脇に赤ちゃんを抱く)なんていうのもある。具体的に教えてくれるので、すぐに実践できた。

いざというときに助けてくれる助産婦さんのおかげで、ナツは2歳2カ月、アチャは1歳7カ月までおっぱい生活を楽しむことができた。

入園とともに起きた、おっぱいの変化

ナツ、アチャ、シュン、3人とも母乳で育ったけど、三人三様。おっぱいの飲み方にも個性があるんだね。私のおっぱいは、ごくごくとたくさん飲んでくれるシュンとは相性がいいらしい。シュンを産んでから、大きなトラブルもなくこれまでやってきた。

ところが、シュンが保育園に行き始めると、シュンと私のおっぱいに変化が起きた。昼間、飲んでくれる人がいなくなった私のおっぱいは、夕方になるとパンパンに張ってしまうのだ。張ったおっぱいは痛い。

おんぶ
ナツの背中は居心地がいいらしい

アチャのときのように乳腺炎にでもなったら大変だ。シュンが保育園から帰ってくるとすぐに飲ませて、ほっと息をつく。しばらくそんな日々が続いたが、1カ月もすると夕方になってもおっぱいが張らなくなった。おっぱいもちゃんと新しい生活に順応するんだ。おっぱいってほんとによくできているなあ。

最近、ちょっと疲れているのかな。背中が痛い。とくに肩甲骨と肩甲骨の間。そういえば、右のおっぱいの下のほうも痛いなあ。家にいるときはモーブラの私も、仕事で外出するときはふつうのブラジャーをする。それが肌に触れて痛む。乳首もシュンに吸われると痛む。おっぱいの調子も悪いのかもしれない。

断乳する? それとも続ける?

ファースト・シューズ
ファースト・シューズはお姉ちゃんのお下がり。上手に歩けたよ

久しぶりにおっぱいマッサージをしてもらいに、助産院に出かけた。

助産師のサイトーさんが、おっぱいをマッサージしながら言った。

サイトーさん「うーん、(おっぱいの)反応がよくないねえ。冷たいおっぱいも出てる。冷たいものが体の中にあったら、体はつらいよね」
ヨ  ー  コ「シュンが昼間飲まなくなって、最初は張っていたんだけど、今は落ち着きました。でも、その分、夜の授乳回数が増えた気がして。体もしんどいし」
サイトーさん「おっぱいやめる?」

シュンの断乳なんて、まだ真剣には考えていなかった。でも、そのことを考える時期になったのかな。突然の断乳のすすめに少々戸惑っていると

サイトーさん「でも、この時期を乗り越えれば、2歳、3歳まであげることもできるよ。続けるなら、ときどきマッサージに通うといいね」

背中と心のマッサージ。気持ちいい!

おっぱいのマッサージのあと、背中のマッサージもしてくれた。背中からおっぱいのほうへ血液を送るようなイメージのマッサージ。気持ちいい。おっぱいも背中も腰も首も血管も、ちゃんとつながっているのだ。子どもを産み、おっぱいをあげているとほんとうにこのことを実感する。

いつもありがとう
6月の第3日曜を保育園では「家族の日」と子どもたちに教えるそうです。アチャが保育園で作ってきたフォトフレーム。付いていたメッセージは「いつもありがとう。アチャ」

マッサージをしてもらって、おっぱいと背中だけでなく、気持ちも軽くなった。そう、おっぱいをやめるという選択肢もあるのだ。続けるならこうすればいいと助言もくれる。決め付けず、相手任せにもせず、サイトーさんはちゃんと私にチョイスを与えてくれる。これが心地よい。

家に帰って、シュンにおっぱいを飲ませた。ごっくん、ごっくんと休みなく真剣に飲み続けるシュンを見て思った。シュンとの大切なこの時間、もうしばらく続きますように。

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著者プロフィール
著者
根本陽子(ヨーコ)。1997年、初めての子どもを妊娠し、自分の望む出産を求めて情報を集め始める。これがきっかけとなり、「お産情報をまとめる会」(下記参照) のメンバーとなる。助産師さんに介助してもらい、長女は水中で、次女は陸で、3人目は再び水中で出産。長女の出産を機に勤務していた研究所を退職。その後フリーランスで辞典の執筆、英語講師、日本語教師、中学校の国語の講師など「ことば」に関する仕事をいろいろして、現在に至る。家族は、片付け好きで子どもの保育園の送り迎えも引き受ける夫・トシ、お姉ちゃんらしくそこそこしっかり育つナツ(小学5年)、自由奔放に心のおもむくままに育つアチャ・(小学2年)、そして2005年5月に生まれたシュンとの5人家族。(写真は、アチャが赤ちゃんだった頃のヨーコ)
お産情報をまとめる会
わたしのお産サポートノート
神奈川県と東京都町田市の産院情報「わたしのお産」、第二の母子手帳「わたしのお産サポート・ノート」を編集した、お母さんグループ。「サポート・ノート」は自分のこと、おなかの赤ちゃんのこと、医師・助産師との対話などを書きつづりながら妊娠生活を送るための本。ヨーコはここで、自分自身の記録を大公開しつつ、出産に向かう(実際の書き込み欄は小さくて、だれでも簡単に記録できるものです)。