第37回 パパのいない夜
「パパ、ありがとう〜〜!」
この夏、トシは仕事で不在がちだ。毎年夏は出張が多いけど、今年ほど多いのは初めて。今朝も、これから新幹線で出張先に向かうトシを、車で駅まで送ったところだ。普段、夫婦二人三脚で子育てをしている我が家にとって、トシの不在は一大事!
食べる。風呂に入る。寝る。毎日当たり前のようにしていることだが、子どもたちにそれをさせることはとても大変。トシがいない日は、その困難さが何倍にもなって、私の前に立ちはだかる。
我が家では、家事の分担を特別決めてはいない。家のことも子どものことも、できるほうができることをする。食事は私が作ることが多いけれど、私が作るときは、作っている間、トシが子どもたちの相手をしてくれる。
私のほうが帰宅が遅い日は、トシが夕食を作っていることもある。仕事から疲れて帰ったとき、玄関のドアを開けて、おいしそうな匂いがしてくるとほっとする。「パパ、ありがとう〜〜!」という気持ちになる。
お風呂は連携プレーで
週の半分くらいは、トシが保育園の送り迎えをする。トシは、アチャのクラスの子どもたちに人気があるらしい。アチャを迎えにクラスの部屋に入ると「アチャちゃんのパパ〜!」と、アチャではなくて、お友達が集まってくるそうだ。トシもまんざらでもない様子。
トシは子育てを「手伝っている」というつもりはないと思う。一緒に子育てしているのだ。こんな夫とだから、私は子育てが楽しいと思えるのかもしれない。
お風呂も、子どもが3人いるとほとんど流れ作業。トシが子どもたちと風呂に入り、一人ずつ洗っていく。私はタオルを用意して、風呂からあがってくる子どもたちを待ち構える。あがってきた子どもを順にタオルで拭いて、パジャマを着せる。トシとの連携プレーだ。
「もういい加減にしなさい!」
トシが出張で留守のとき、これらすべてを私一人でやらなければならない。仕事で出かける夫に心配をかけたくはないけれど、このところの出張続きに、つい弱音を吐いてしまう。
ヨーコ「パパがいないと心配だな〜。どうしよう」
トシ 「大丈夫、大丈夫」
トシの留守中、とくに「大変だなあ」と感じるのが、子どもたちを寝かしつけること。シュンが生まれて子どもが3人になり、余計にそう感じるようになった。
夜寝るとき、子ども3人と私が一部屋に寝ているのだが、シュンにおっぱいをやりながら寝かしつけていると、隣でナツとアチャがふざけ合っている。お姉ちゃんたちがふざけていると、シュンも興奮して眠れない。いくら言ってもやめないと「もういい加減にしなさい!」とつい怒鳴ってしまう。こんなときはトシの出番。
トシ 「ナツ、パパと寝ようか」
とナツを誘って、別の部屋へ。ナツがいなくなるとアチャは気持ちが落ち着いてくる。
おしゃべりを楽しんだら・・・ぐっすり
布団に横になって、アチャの背中をトントンとやさしいリズムでたたいてやる。
アチャ「今日ね、保育園に新しいお友達が来てね、アチャ、その子と結婚するんだ」
ヨーコ「ふーん、で、その子は『いいよ』って?」
アチャ「ううん、明日聞いてみる」
という感じで、ひとしきりおしゃべりを楽しむと「おやすみ」と言って眠りにつく。別室のナツはナツで、トシの隣に寝転んで、好きな本を読みながら、眠くなると勝手に寝るという。
昨晩はナツが先に寝て、アチャがなかなか寝付けなかったので、アチャがトシと寝ることになった。心配だったので朝になって聞いてみた。
ヨーコ「夕べ、アチャ、大丈夫だった? すぐ寝たの?」
トシ 「すぐではなかったけど、寝たよ。運動会でやるバルーン(という種目)で、いくつ技があるか数えたんだ。ねえ、アチャ!」
アチャ「うん、全部で16こあるんだよ」
ヨーコ「へえ、そんなにたくさんあるんだ。楽しみだねえ」
二段ベッドでもダメみたい
ナツもアチャも、別々の部屋だと落ち着いて眠りの準備に入れるらしい。かといって、それぞれに寝室は用意できない。同じ部屋でも二段ベッドなら、上と下で自分の空間があるから落ち着けるかしら。
ヨーコ「二段ベッドにしたら、ナツとアチャ、静かに眠れるかな」
ナツ 「ナッちゃん、上がいい!」
アチャ「アチャも上がいい!」
トシ 「これじゃ、二段ベッドでもだめだね(笑)」
今夜もまた、トシのいない夜がやってくる。ナツとアチャはちゃんと寝てくれるだろうか。シュンはどうだろう? 今朝、駅での別れ際、トシが一言、「じゃ、ママ、頑張ってね」。トシの言葉を励みに、頑張ろう! 今夜は早めに布団に入って、3人の好きな絵本を1冊ずつ読んでやろうかな。
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