第58回 継続はきっと力になる
スイミング、つまらない、やめたい
ナツは、小学校3年生のとき、スイミングを習い始めた。就学前や低学年から習っている子も多い中、3年生からというのは少し遅いくらいの感じがしたが、小さい子に比べて、コーチの言うこともよく理解できるのだろう。水泳というスポーツにナツが向いていたのかもしれない。トントンとおもしろいように進級した。1年後に1級のテストに合格して、トシと私を驚かせた。
ところが1級に合格したとたん、急に「つまらない」「やめたい」と言い出した。目標を失ったのか、あるいはタイムを縮めることが目標になり、ひたすら距離を泳ぐ練習がきつかったのか。理由ははっきりしなかったが、ナツのスイミングに対する熱意はすっかりなくなってしまった。
簡単にやめてはいけないよ
でも、トシと私の意見は共通していた。
「自分でやりたいと言って始めたことを、そんな簡単にはやめてはいけない」
「やめたい」「行きたくない」と言うナツとの根比べが始まった。
日々やめたいと口にするナツは、それでも、決して練習を休まなかった。毎週毎週、つらそうに練習に出かけていくナツを送り出していると、かわいそうな気がしてきた。嫌々練習してもしかたないのではないかという思いも芽生えた。
夜の楽しみは、噴水のショー |
「やめてもいいよ」というタイミングが見つからず・・・
でも、いつかはやめるにしても、たとえば1つ進級するとか、大会に出て頑張ったとか、何かいい思い出や努力した結果を残してから、次の目標に向かってほしかった。
「やめてもいいよ」というタイミングがなかなか見つからなかった。
しばらくすると、ナツが「やめたい」と口に出して言う回数が少しずつ減っていった。半年もたつとほとんど言わなくなっていた。楽しそうとまでは行かなくても、つらい時期を脱したのかなと思った。
そうしてナツは、ついに次の級に合格した。1級に合格してから、ちょうど1年たっていた。
アチャの悩み
ちょうどそのころ、アチャがスイミングを習いたいと言い始めた。1年生の夏休みと冬休みに短期の教室に通った。楽しそうに通っていたので、続けたければ入会してもいいよと言ったけど、アチャは「いい」と言って、そのままになっていた。
ところが、1年生も終わりに近づいたある日、「アチャね、本当はねスイミング習いたいんだけど…」と話し始めた。
アチャには悩みがあった。
アチャ「スイミング習いたいんだけど、一度習ったら、やめたくなってもやめさせてもらえないでしょ」
なるほど。アチャはこの点にひっかかっていたのか。合点がいった。
島の中を回るトラムにはドアがありません。さわやかな風を感じながら、ゆっくりと景色を楽しむことができます |
考えて、考えて、決心した
ヨーコ「そうだね。一度やり始めたことはそんなに簡単にやめてはだめなんだよ。だからよ〜く考えてね」
アチャ「うん」
何日かして、
アチャ「アチャね、やっぱりスイミング習いたい!」
アチャは7歳の頭で、考えて考えて、決心したに違いない。アチャ、頑張るんだよ。応援しているよ。
見てください。このきょうだいのはしゃぎっぷり! |
シロソビーチとアチャ |
きょうだいから学ぶこと
今、アチャは、毎週元気にスイミング教室に通っている。アチャのクラスのあとに、ナツのクラスの練習が始まる。2人は更衣室ですれ違うとき、声を掛け合っているらしい。どんな会話をしているのかな。姉妹の姿、のぞいてみることができないのがちょっぴり残念である。
夜、子どもたちが寝たあとに、トシと話をした。
トシ「ナツが『やめたい』と言ったとき、簡単にやめさせなくてよかったね」
ヨーコ「子どもはちゃんと見てるんだね」
親よりも、年の近いきょうだいから学ぶことのほうが、実はたくさんあるのかもしれない。ナツとアチャ、2人のお姉ちゃんを見て育つ末っ子のシュンは、どんなふうに育つのだろう。今から楽しみである。
シュン、初めてのスライダーに挑戦 |
ナツと一緒に、無事に滑ることができました |
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