第11回 3歳の娘を連れて、図書館、講義・・・一緒に大きくなっています
‘人’らしくなった娘。すごいなぁ
ようやくエジンバラでの学生生活にも慣れてきた。はじめのうちは課題図書(ほとんどがウェブ・ジャーナル) ひとつ見つけるにもコツがわからず膨大な時間をかけていたが、 すこしずつ探すのが上手になって、今では費やす時間は 入学当初の10分の1くらいにスピードアップ。
娘も今月でようやく3歳の誕生日をむかえ、だんだん手がかからなくなってきた。とうぶん添い寝は欠かせそうもないけれど、ひとりでトイレに行ったり、靴を履いたり(左右逆になることがほとんどだけど)、大きな声で‘おひなさま’の歌を歌ったり。すごいなぁと思ってしまう。大人にとっては何でもないことかもしれないけど、人は3年も生きると、こんなに‘人’らしくなってしまうもんなんだ。。。
大学院はオーバーワーク、さらに授乳でふーらふら
ああ、でも相変わらずおっぱいは飲んでいるから、まだまだ動物の赤ちゃんらしいところはたっぷりあるか。常日頃から、まわりと比べたりしないで、あせらず大きくなっていくのを見守ろうとする私だが、おっぱいに関しては‘そろそろなんととかしようかな〜’という気持ちも最近になって遅ればせながらでてきた。
というのも、大学院は面白いのだけれど、なにせ課題がありすぎて、授業のない日も図書館に行ったり、クラスメートとパワーポイントでのプレゼンテーションの準備をしたり(今も娘を夫に託して大学のコンピュータールームで書いてます。ちなみに日曜日の夜10時! トホホ。でも大学の近くに住んでいてよかった!)、主任の先生と面接をしたりと、私にとってかなりのオーバーワークになっているのだ。毎日が寝不足。さらに授乳もしているので身体はもう、ふーらふらなのだ。
ママ学生同士「お互いがんばろうね」
まわりのクラスメートたちは、週に2回しかナーサリーに行かせてないの? もっとあずける日数を増やせば? と心配してくれるけど、「娘と過ごす時間も勉強以上に大切だと思うと。。。」と、つたない英語で語尾をにごらせながら、あずけない日は娘を連れて図書館に通っている。
「一緒に大学いく?」と聞くと、満面の笑みで「ウンっ!」と答える娘は近頃ではすでに勝手がわかっているらしく、私がジャーナルを探すあいだ、おとなしく絵を描いたり、絵本を読んでいてくれる。
ママさん学生も相当数いるらしく、図書館でベビーカーとすれ違うこともある。そんな時はまるで戦友のように親同士、「お互いがんばろうね」とアイコンタクトを交し合ってしまう。
「まぁかわいい学生さんね」とマーティン教授
先日は、NY大学からやってきたエミリー・マーティン教授の特別集中講義に娘を連れて行った。夕方5時にナーサリーに迎えに行ってくれるはずの夫の予定が、急な仕事でだめになり、ほかに選択肢はなかった。
マーティン教授は女性の性と生殖に関する分野では第一人者の医療人類学者だ。どんなことがあっても聴きたい講義だったので、サラの手を引っぱりながら恐る恐る講堂に入ると、なんとマーティン教授本人が真っ先に「まぁかわいい学生さんね」と娘に声をかけて下さった。
主任教授も他の学科の先生たちもみんなで娘を抱っこしたりキャンディーをくれたりとあやしてくれたおかげで、娘は2時間の間、ロリーポップをしゃぶる音以外は、ほんとうにしずかに座っていることができた。
ぜったいにちゃんと学位をとろう!
講義が終わりロビーに出ると、銀色の髪をおかっぱに切りそろえたマーティン教授が「びっくりするくらい静かだったわね!」と、ニコニコ顔で声をかけてくださった。
実は私も驚いた。この夜ほど、娘がお絵かきに集中していてくれたことはなかったからだ。母の「どうしても聴きたいっ!」という想いが、痛いほど通じたのだろうが、その晩、寝顔を眺めながら、娘がけなげに思えて仕方がなかった。
ここまで「いい子」にさせてしまっている分、ぜったいにちゃんと学位をとろう!と決意をあらたにした夜となった。
(続く)
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木村章鼓(きむら あきこ)
英国在住のドゥーラ&バースファシリテーター
エジンバラ大学大学院 医療人類学(Medical Anthropology) 修士
約65カ国を訪問し、世界のお産に興味を持つ2児の母
「ペリネイタルケア」(メディカ出版)にて「ドゥーラからの国際便」を連載中
HP http://nomadoula.wordpress.com/