第51回 おっぱい、バイバイの日《前編》
はじめて、朝まで眠り続けたシュン
その日は、突然やってきた。
シュンの2歳の誕生日が近づいたある日、朝、目が覚めて気づいた。
シュン、夕べ寝るときにおっぱいを飲んだあと、朝まで一度も起きなかったのだ。いつもはおっぱいを飲むのに夜中に何度か起きるシュンが、朝まで眠り続けたのはこの日が生まれて初めて。
「夜中におっぱいを飲まない」=「卒乳」という図式が私の頭の中にはできあがっている。それには理由があって、話はナツの断乳(当時はまだ「卒乳」ということばはあまり聞いたことがなかった)までさかのぼる。
小さく生まれてゆっくり育ったナツの場合
小さく生まれてゆっくり育ったナツは、おっぱいの飲みも多いほうではなかった。一方私のおっぱいはどちらかというと出過ぎるタイプ。需要と供給のバランスが合わず、私のおっぱいはすぐに調子を悪くして、詰まったり、痛くなったりした。そのたびに助産院に駆け込んで、マッサージをしてもらい、授乳や子育ての悩みを聞いてもらう日々だった。
ナツが1歳を過ぎ、歯が生えてくると、乳首を噛まれて傷つくこともあり、おっぱいをあげること自体が苦痛に思うことが増えた。そこで、断乳をしようと決めた。
突然おっぱいをやめると、子どもが混乱すると聞いたので、あらかじめ「やめる日」をナツに伝えてからやめることにした。カレンダーに丸をして、「この日におっぱいバイバイね」と、まだ小さいナツに言い聞かせた。
せつない、悲しい気持ち。これは、何?
ところが、やめる日が近づくにつれて、私のほうが落ち着かなくなった。せつない、悲しい気持ちになったのだ。ナツとのおっぱい生活がもうすぐ終わりかと思うと、さみしくてさみしくてたまらない。自分で決めたことなのに… 私がそうしたくてするのに… なんなの? この気持ちは?
こんな気持ちのまま断乳を決行しても、ナツがおっぱいを欲しがって泣いたら、きっとあげずにはいられない。それでは断乳が中途半端になってしまう。結局、「おっぱいをやめる」のはやめにした。
こんな失敗を、2度繰り返した。そして分かったこと2つ。ママに固い決心がないと断乳はできないということ。それから、やめる日を決めてからやめるというやり方は、私には向いていないということ。
そんなナツにもある朝、その日がやってきた。夜中に一度も起きず、朝まで眠り続けたのである。
我が家の日常風景 | ||
カゴに入ったら、ひっくり返って、シュン、泣く |
パパとシュン、まったり過ごす時間 |
風呂あがりに、姉妹でダンス。「早くパジャマを着なさい!」とヨーコが叫ぶのもいつものこと |
「おっぱいバイバイ」の合図
ミルクで育った子は、割と早い月齢で朝まで起きなくなるというが、ナツは夜中に起きないということのない子だった。夜中の授乳は睡眠を中断されるママにとっても楽なことではない。つらく感じたこともあったけど、おっぱいで育った子はこういうものだと思って、この日まで授乳をしてきた。
そのナツが、朝まで起きなかったのである。私にとっては画期的なことだった。これは子どもからの「おっぱいバイバイ」の合図だと感じた。
一晩おっぱいを飲まないということは、だいたい12時間は飲んでいないことになる。昼間は遊びに夢中になればおっぱいを欲しがることもない。このままおっぱいを終わりにしよう。早速トシにも私の決心を告げ、協力をお願いした。
近くの川で子どもたちが川遊び。大人がロープを張って、見守ってくれるので安心 |
今年も庭のユリが、見事な花を咲かせました |
朝採りのとうもろこしをいただきました。アチャはお手伝い、大好き |
お姉ちゃんたちの卒乳体験、さてシュンは?
その夜から、おっぱいを欲しがるナツとの戦いが始まった。お風呂はトシに入れてもらい、抱っこすると服をめくっておっぱいを出そうとするので、おんぶをし、寝かしつけもトシに頼んだ。
ナツが「パイパイ」(おっぱいのこと)と言わなくなるまで1週間かかった。それでもその間、不思議と「おっぱいをやめるのをやめたい」とは一度も思わなかった。こうしてナツとの2歳2ヶ月のおっぱい生活は終わった。これがナツと私流の「卒乳」だったんだと今でも思う。
こうして、先に書いた「夜中におっぱいを飲まない」=「卒乳」という図式ができあがったのである。二人目のアチャも、同じタイミングでおっぱいにバイバイした。
さて、話をシュンにもどそう。
保育園の夕涼み会。ナツはヨーヨーつりに興じ、アチャはおやつの枝豆ごはんをほおばり、 |
突然やってきた、その日
その日はたまたまナツが学校の遠足で、私は朝からお弁当を作るのにいつも以上にばたばたしていて、おっぱいを飲まずにシュンは保育園へ行ってしまった。
シュンとのおっぱい生活は、まだもう少し続くのかなあと思っていた私。突然やってきたシュンからの「おっぱいバイバイ」の合図。えっ、このままおっぱい、終わっちゃうの? 私のほうが半信半疑である。
昼間仕事をしていても、何だか落ち着かない。夕方シュンが帰ってきて、おっぱいほしがったらどうしよう。あげようか。それともこの合図を逃さないほうがいいのだろうか。そもそも私は、シュンとのおっぱい生活をやめたいのだろうか。シュンはどう思っているか? いろいろな気持ちが交錯してくる。
シュンも甚平を着て、張り切っていたのに、園に着いたときには、この通りでした… |
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