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第20回 妊娠〜出産〜産後を見守る、「ドゥーラ」という存在(1)どんな仕事?

ギリシャ語で「助ける人」

娘とレオくん
お正月休みはフランクフルト郊外に住むドイツ人の友人宅へ。スキーよりやっぱりまだソリのほうがいいという娘とレオくん

2007に、スコティッシュ・ドゥーラ・ネットワークの認定資格を取得して以来、ドゥーラとして実際のお産に立ち会う機会が増えてきた。ドゥーラだからこそ足を踏み入れることのできる聖域で、感動と気づきの連続に、「生きててよかったぁー!」の気持ちで日々どこまでも満たされきっている。

一方、大学院を卒業後も、学会や勉強会に毎月のように出席しているので、生活は多忙を極めている。先週も、ホームバース・カンファレンスのため6時間かけてシェフィールドまで行ってきた。そんな慌しい毎日で、なかなかパソコンに向う時間もとれないまま、気がつくと最後の連載アップから半年以上もたってしまった。

ところで、ドゥーラについて知っている方は日本にどのくらいいるのだろう?

いったい何をする人?

日本人の方によく聞かれる。

ドゥーラとは、もともとギリシャ語で、助ける人(女性)、を意味する。医療行為は行わないが、基本的な出産サポート訓練を受けている分娩付添人だ。

医療スタッフにはできないことをする

手づくりの木のおもちゃや棚、お人形
シュタイナースクールで仲のいい娘のクラスメート宅。ママ手づくりの木のおもちゃや棚、お人形でいつもいっぱい

私の受講したアデラ先生創設のドゥーラ養成コースでは、具体的なサポートと並行して、産む女性へのエモーショナル・サポートについて学びを深めることに主眼をおく。

ミッドワイフ(助産師)としてもお産をサポートしてきた経験のあるアデラ先生は、「ポジティブ・ペイン(直訳すると前向きな産みの痛み)」を出版しているほか、現在は出産に関わるコラムなども数多く執筆している。

それらのなかでも一貫して強調しているのは、医療スタッフと産みゆく女性がより絆を深めることができ、安心してお産にのぞめるよう、ドゥーラは、妊娠―出産―産後を見守る「非医療スタッフ」としての立場を明らかにしなくてはならないということ。

アデラ・ストックトン著
‘Birth Space, Safe Place’
フィンドホーン出版

クッション役がいるから、助産師さんも安心

第3セクターであるドゥーラがいることで、産む側(たいていの場合、産婦さん本人とパートナー)と医療スタッフとの間にワンクッションおくことができ、二者対立構造に陥りにくく、産む側は無用に感情的にならずに済むとも述べている。

自分の受け持ちの妊婦さんについて話す時に、「彼女、ドゥーラをつけるらしいの。だから安心できるわ。」とミッドワイフ(助産師)が話すのを私自身も何回か聞いた。

ドゥーラがいる方が、すべてにおいて事がスムーズに運ぶのだと言う。ドゥーラのいるお産と、いないお産の違いを誰よりもハッキリと肌で感じているのは、どうやらミッドワイフ(助産師)たちのよう。

分娩の所要時間が2時間も短縮された

お産の現場に漂いがちな緊張感によって、いつのまにか曖昧になりがちな産婦さんの希望を成就すべく全身全霊で尽くす。これは、「医療スタッフであってはなかなかできないことである」、そうネピア看護大学の助産学の先生方も話される。

エジンバラ大学で教鞭をとるローズマリー・マンダー教授(ミッドワイフ)も、著書のなかで、家族以外のバースパートナーの筆頭にドゥーラを挙げている。

さらには、ドゥーラの付き添うお産とそうでないお産について、たとえば、

・分娩の所要時間が平均で2時間ほど短縮される
・帝王切開率が50%下がる
・会陰切開率および産後うつに罹る率が激減する

など、さまざまな調査結果を、ミッドワイフ(助産師)とバースティーチャーを対象とした勉強会で紹介されていた。
(続く)

春の風を葉いっぱいに吸い込んだ木々
木々が春の風を葉っぱいっぱい吸い込んで、ますます深い緑になってきます。
━娘の学校の校庭にて


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著者プロフィール
木村章鼓(きむら あきこ)
英国在住のドゥーラ&バースファシリテーター
エジンバラ大学大学院 医療人類学(Medical Anthropology) 修士
約65カ国を訪問し、世界のお産に興味を持つ2児の母
「ペリネイタルケア」(メディカ出版)にて「ドゥーラからの国際便」を連載中
HP http://nomadoula.wordpress.com/