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第22回 ドゥーラ仲間、ミシェルの流産。


妊娠5カ月の悲しいできごと

マイメンター、ドゥーラのニコラさん
マイメンター、ドゥーラのニコラさん。いつもポピーシードケーキでもてなしてくれる

ドゥーラ仲間のひとりにミシェルがいる。
芯が強くて、あったかい。ユーモアのセンス抜群でどんな時にも前向きな彼女と出会ってからの3年間、どれほど助けられてきたことか。

そんな彼女が先週、とても悲しいことに、お腹の子を亡くした。
妊娠5カ月だった。職業柄、辛い話を見聞きする機会は日々あるのだけれど、ミシェルとは時にはチーム編成で仕事をし、家族ぐるみでも仲良くしていたぶん、私たち家族が受けた衝撃もほんとうに大きかった。


流産した翌晩の、お産立ち会い

桃色のオーラ
すやすやと眠る赤ちゃんからは桃色のオーラが

だがやはりミシェルは、ドゥーラである。流産して3日目の彼女は、まっすぐにこちらを見て言う。

「いのち(生命)に自然淘汰はあるはず。理由のつかない流産は、大切なことを教えてくれることも多いから、私は隠したくない。辛い体験だからこそ、ひとりで抱え込まないで、‘流産'をもっと広く語る場づくりも必要ね」

流産した翌晩にミシェルは、ホームバースに立ち会った。「どうしてこんな時に」と思ったのは、産婦さんのお宅に到着するまでで、「あぁドゥーラでよかった。癒された。。。」と明け方家路についたという。


お産がもたらす、深い自己充足感

ホームバースの光景を描いたポストカード
スコットランド北部の大学で行われたミシェル・オダン博士の講演会。私たちSBTA(スコティッシュ・バースティーチャー)も、ネパール人女性支援のための基金を集めるべく、ホームバースの光景を描いたポストカードを売ることに

ブロンドにブルーアイズの彼女は、もしドゥーラという職業に出会わなければ、院で学んだ知識を活かし、そのまま養護学校の先生をフルタイムで続けていたという。でも今は、ドゥーラという仕事が好きで好きでたまらない。

納得感のあるお産、言い換えると、お母さんと赤ちゃんのあるがままが尊重されているようなお産では、本人はもちろんのこと、その場に居合わせるすべての人たちに深いレベルでの自己充足感がある。

それを多くの人が‘スピリチュアル'と表現してみたり、‘究極の癒し'と呼びたくなるのもうなずける。ミシェルも‘そこ'にいってきたという。





ホームバース・カンファレンス メンバーになっているAIMS
シェフィールドにあるステンドグラスの美しい教会で3月に行われた、ホームバース・カンファレンス
私もメンバーになっているAIMS。産科医療をめぐる消費者センターのようなもので、AIMSジャーナルは内容盛りだくさんですばらしい

私は宇宙の一部である

命を産み出すことは、‘私'を俯瞰して、銀河系の一部であることを思い出す体験。その場に居合わせる人間も、広大無辺な宇宙の摂理について思い起こすきっかけをもらえる。悲しみのどん底にあったはずのミシェルは、いのち(生命)の輝きに打たれて、すべてを礼賛したい気持ちに満たされたという。

「一度この世界の近くまで来たから、次も迷わず戻ってきてくれると思う、この中に。その時はあらためてアキコにドゥーラをお願いするからね」あたたかい初夏の日差しのなか、ミシェルはお腹をそっと包むように撫でて微笑んだ。


ホメオパスのドゥーラ仲間のお手伝い クリスタル・ヒプノセラピーのセッション
UKでホメオパシーについて学ぶ機会に恵まれ、ホームバース・カンファレンスの会場でもホメオパスのドゥーラ仲間のお手伝いをさせてもらえることに
ドゥーラセラピーの一部に、一昨年取得したクリスタル・ヒプノセラピーのセッションをとりいれるようにしたら、意外にも評判は上々

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著者プロフィール
木村章鼓(きむら あきこ)
英国在住のドゥーラ&バースファシリテーター
エジンバラ大学大学院 医療人類学(Medical Anthropology) 修士
約65カ国を訪問し、世界のお産に興味を持つ2児の母
「ペリネイタルケア」(メディカ出版)にて「ドゥーラからの国際便」を連載中
HP http://nomadoula.wordpress.com/