第31回 子宮はあたたかく ---7年ぶりの妊娠に思い当たること(1)
赤ちゃんといると時間の経つのは本当に早い。前号では、まだ生まれたばかりだった息子は、今や生後5ヶ月。母乳だけでぷくぷくと元気に育ってくれている。
いっこうに二人目のやってこなかったこの7年間。娘一人でも元気に育ってくれていることに感謝しながら、人為的なことは一切せず、クリニックなどに相談に出向くことすらなく過ごしてきた。気をつけていたのは食事と運動くらい。
そして今回、長いブランクを経て二人目を身ごもれた理由として、三つ思い当たることがある。
ひとつめは、現在7歳になる娘を産んで以来、スコットランド〜ロシアと、ずっと寒い環境に住んでいたことが自分の体質には合っていなかったのかもしれない、ということ。
夏の終わりに移住してきたここヒューストンは、一年を通して南国のような気候だ。今は2月。真冬のはずなのにTシャツで過ごせるほど温かい。
ここに来て最初の数ヶ月でいっぱい汗をかけたおかげで、知らず知らずのうちに妊娠前の体の大掃除、デトックスができたようだ。
ふたつめは、引っ越してきてすぐにホット・ヨーガを始めたこと。
スタジオが近所だったので、知り合ったばかりの友人と行き始めたのだが、思いっきり汗をかける喜びに目覚めた。頭から水をザバーっとかぶったように全身汗だく。
マットの上に敷いたバスタオルが絞れるくらいに汗をかいた後には、うだるようなテキサスの熱風が涼しく感じられるから不思議だ。
このホット・ヨーガに通ったことが、私の子宮にとってよかった気がする。
腰もお尻も腹部も、下半身全体がいつも適度にあたたかい、そんな、新しい命を育むのに適切な土壌がいつの間にか出来つつあったのだろう。
子宮は、いつどんな時でも、ほっこりとあったかいのが好きらしい。
私たちは普段から、生理痛でお腹が痛い時には、お腹をかばうように丸くなりたい。まあるくなって子宮を温めるような格好をごく自然にとりたいのだ。
妊娠中つらい時には、足湯をしたり、湯たんぽで温めると症状が和らぐことも体験的に知っている。
陣痛がきた時には腰に温湿布をすると、痛みが和らぐことも周知の事実だ。
欧米では、妊娠した有名人のヘソ出しルックがパパラッチなどに隠し撮りされて雑誌の表紙などを飾っていることがある。
日本では、犬の日を境に腹帯をして腰まわりをサポートし、お腹を温める風習があるせいだろうか、剥き出しのお腹を見ると私は、ブルっと寒気がして、純粋に彼女たちのお腹の赤ちゃんたちが心配になってくる。
この、ブルっとする感覚を、自分のなかで見落とさずに、しっかり意識していたいと思う。犬の日の由来を知らなくても、祝わなくなっても、お腹とは、あたためるもの、という名残が私たちの文化に今もまだ自然に見つけられることにホっとする。
姿や形は変わっても、腰とお腹まわりに何かもう一枚まといたい。子宮を守りたい、あたためたい、という感覚は、私にとって、娘のためにも伝えていきたい大切な身体感覚のひとつだ。
三つ目は、長い話なので、ゆっくりと次号に書きたい。
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木村章鼓(きむら あきこ)
英国在住のドゥーラ&バースファシリテーター
エジンバラ大学大学院 医療人類学(Medical Anthropology) 修士
約65カ国を訪問し、世界のお産に興味を持つ2児の母
「ペリネイタルケア」(メディカ出版)にて「ドゥーラからの国際便」を連載中
HP http://nomadoula.wordpress.com/