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第32回 エンジェルが連れてきた! ---7年ぶりの妊娠に思い当たること(2)


でもって自宅に天使を呼ぶ?
さんぽ道で何匹ものうさぎと遭遇
夏至の晩、いつものさんぽ道で何匹ものうさぎと遭遇。まるでこれから月夜の会合に行くみたい。みんな急いで同じ方向へと消えていった。

3つめは、まったく説明のつかない話だが、どうやら天使(!)が赤ちゃんを連れてきたらしい、ということ。

あれは、2010年の9月だったと思う。ロシアで仲のよかったオーストラリア人の友人コリーナさんから、久しぶりにメールがきた。長い近況報告の最後は、『あきこも家にエンジェルを招いてみない?うちには今夜から来るの』と結ばれていた。

管理栄養士でもあるコリーナさんは私も大好きだし、ご主人もきちんとした方で信頼できる家族だけれど、でもって自宅に天使を呼ぶ? 添付ファイルで招き方の詳細までつけてくれている。

娘なら喜んでしたがる内容だろうが、40歳近い私がどうやってこれに返信しようか。。。とペンディング状態になったまま一週間くらいがたった。


いいじゃないか、ウソでも本当でも。
ヘビに遭遇
同じ晩、こんどはヘビに遭遇。どこかで動物たちの夏至の日の宴が 開かれるのか。木の葉を口にくわえてうさぎたちと同じ方向へ走り去る。

その晩、夫が夕飯時にたまたまオーストラリアの話をしだしたので、ふと天使のことを思い出した。コリーナさんの近況を伝え、『で、天使も呼ぼうと思えば呼べるらしいよとメールに書いてあったんだ』と言った。夫は、ふーんという顔をしていたが、ひとこと、『面白いね』と言った。娘は『やりたいやりたい!』と飛び上がった。

それだけのことだが、私のなかで何かがその時に変わった。もう一度メールを開いて、添付ファイルを開いて、天使を招く方法を読み返す気になったのだ。

いいじゃないか、ウソでも本当でも。


現代の魔女さながらのドゥーラや助産師たち
開業助産師サンドラさん
開業助産師サンドラさんは、我が家に妊婦健診に来ると、自分の使ったカップを洗って帰ります

私たち現代人は科学で証明されていないことを見て見ぬフリしがちだけれど、なかには証明されていないだけで深い意味をもつことも世の中多い。

私が学んだエジンバラのお産の世界にだって、現代の魔女さながらのドゥーラや助産師たちがいた。

彼女たちは、出産の睿知、つまり(赤ちゃんの能力や産後の治癒力も含めて)、母子のこころとからだに備わった潜在的な力、を尊重することをモットーに仕事をしていた。ほんとうに最低限の介入しかしない。


祈り、おまじないのようなことが産婦さんとの絆に

でも、手を出さない代わりに、産前から頻繁に、祈り、おまじないのようなことをして産婦さんとの絆を築いていた。

例えば、臨月が近い妊婦さんに粘土細工をさせて、創作活動を通して滞った感情を吐き出させたり、実際のお産では、自分の一番大切なものを首にかけたり手に持つようにアドバイスをしたり、陣痛の合間に不思議な音色の歌を歌ったり、陣痛が遠のいたら太鼓を叩いたり。。。私は、そのようなエビデンスのない儀式めいたことがお産の結果に大きく貢献するのを目の当たりにしてびっくりした。


産んだ女性の「納得感」
妊娠中にウォーキングしていた家の前の川
わたしの家の前に流れている川。妊娠中によく、川べりをウォーキングした

結果というのは、どこでどういう産み方をしたか、ではない。産んだ女性の納得感だ。

妊娠中にお腹におまじないの絵を描いてもらったり、工作や音楽によって先述のような儀式をしたりしてこころとからだのバランス調整を図っていたDさんは、想定外の緊急帝王切開になったけれど、自分のお産にとても納得していた。

私自身も、もろく揺れ動きやすい産後の女性に効くといいなぁと思い、ハープ奏者の友人と一緒に産後訪問をして、詩と音楽を捧げていたこともある。


Metatronという名の大天使と2人の天使が来る

さて、話を戻して、天使である。

それは例えば節分の豆まきと同じな訳で、人に迷惑をかけずに楽しめるのなら、ぜひ試してみようじゃないかということになった。コリーナさんからのメールは、モノやお金をかけずに、家族でささやかに楽しむのが一番と思っている我が家に思わぬファミリーイベントをもたらした。

来るのは3人。Metatronという名の大天使と2人の天使だという。

9月24日の夜10時30分までに、白いロウソクのとなりに天使の好むという白い花を供え、叶えて欲しい3つの願いを書いた紙を封筒にいれて置くようにと招き方には書かれていた。

ファイルを開くことをペンディング状態にしていたので、24日といえばもうあと数日しかない。でもギリギリ間に合ってよかった!と思う。







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著者プロフィール
木村章鼓(きむら あきこ)
英国在住のドゥーラ&バースファシリテーター
エジンバラ大学大学院 医療人類学(Medical Anthropology) 修士
約65カ国を訪問し、世界のお産に興味を持つ2児の母
「ペリネイタルケア」(メディカ出版)にて「ドゥーラからの国際便」を連載中
HP http://nomadoula.wordpress.com/