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第35回 ドゥーラサミットinヒューストンで感じたこと(その1)仕事の喜びとつらさ


独立開業ドゥーラたちが集まった!
ルイジアナ州の湿地帯のワニ
我が家のおとなりにあるルイジアナ州の湿地帯にはワニがとても多い

先週、地元ヒューストンでドゥーラ・サミットなるものに参加しました。

ヒューストンには大勢の独立開業ドゥーラがいるのですが、すべての人が参加できるようなコミュニティーが今までありませんでした。そこで40年以上のベテラン助産師であるパット先生が、ネット上で呼びかけ、今回初めてドゥーラたちが一堂に集まったのです。

といっても受け持ちのお産で忙しかったり、家族の世話などがあったりして、事前に参加表明したドゥーラの数は思ったより少ないものでした。
それでも忙しい月曜日の晩にもかかわらず、ヒューストン市内から20名以上が集まりました。


肩寄せ合って、ディベートも盛り上がり…
コケの種類
木から垂れた長いヒゲ。かつて綿花と同様クッションの詰め物などに使われていたというコケの種類。

ドゥーラの名刺を受け取ると気づくことがあります。それは、ドゥーラだけでなく、助産師、バース・エデュケーター、アロマセラピスト、心理カウンセラー、マッサージセラピスト……と様々な肩書きが並んでいることです。

今回会場となったのは、普通の家を一部改造したようなクリニックで、診察室はぎゅうぎゅう詰め状態です。肩を寄せ合って座ったせいでしょうか、ディベートの内容も深く濃く、最後は近くのパブに場所を移すほどの盛り上がりをみせました。

それぞれの自己紹介のあと、‘ドゥーラでよかった!’と思えることを一人ずつ発言し、次に、時間拘束の長い現場で働くものとして‘これは辛い、大変’と思うことを再び一人ずつ吐き出していきました。


ドゥーラでよかった!
ペリカン
本来なら海水にいるはずのペリカンがミシシッピーの湿地帯で?

よかった!と思える点のなかでも、私にとって印象的だったのは、ある人の「女性に仕え、トランスフォーメーション(変容)に立ち会える喜び」という言葉です。

別の人の「夫や子どもに振り回されている時とはまったく違う時間の流れに浸りきることができる。その結果、日常を振り返る視点が生まれ、家族への愛も深まる」という発言には、皆が大きく頷いていました。


精神的、肉体的つらさと、家族のこと

反対に、ドゥーラをしていて辛い点を共有する場面では、「産前から細やかにアドバイスしているのに聞く耳を持たない妊婦さんがいると‘自分の知っていること’と相手の求めるものとの間に大きなギャップを感じ、ケア中に自己嫌悪やジレンマを感じることがある」という声がありました。

また、お産が始まった時に備えて、何週間も24時間待機中の状態でいなくてはならず、精神的にも肉体的にも自分や家族が万全であるためにかなりの努力を要する、これも共通の悩みのようです。仕事と家庭と、‘バランスとりの難しさ’を誰しも抱えているのですね。(その2に続く)


ルイジアナ州の湿地帯 ミシシッピー支流
ルイジアナ州の湿地帯。水面が赤く濁っているのはハリケーンの影響だとか
小型観光船でのツアーで目の前を流れていった一コマ。‘ミシシッピー支流の住民はタフでないと生きていけないんだよ’そう船長さんが話していました

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著者プロフィール
木村章鼓(きむら あきこ)
英国在住のドゥーラ&バースファシリテーター
エジンバラ大学大学院 医療人類学(Medical Anthropology) 修士
約65カ国を訪問し、世界のお産に興味を持つ2児の母
「ペリネイタルケア」(メディカ出版)にて「ドゥーラからの国際便」を連載中
HP http://nomadoula.wordpress.com/