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第36回 ドゥーラサミットinヒューストンで感じたこと(その2)助産師との違い


仕事と私生活の境界線
ヒューストンの空
ヒューストンの空。黄昏の色に包まれていると、なぜかホッとします

会合では、「妻、母としての役割そっちのけで、妊婦さんの相談役になりきってしまうことの危険性」について体験談を打ち明けるドゥーラもいました。

病院勤務の医療スタッフと違い、自らも住まう地域コミュニティーで、口コミにより仕事を受けることの多いドゥーラにとって、日常生活に受け持ちの妊婦さんが自然と入ってくる場合も多い(例えば子ども同士が同じ学校に通っているお母さんであった場合など)のです。
仕事のオン・オフの境界線がとても引きにくい職種であることが、私にもあらためて実感として伝わってきました。


自由な立場で働きたい
再びポッサム
我が家のポーチに再びポッサムが!動きはナマケモノのようにとてもスローです

また、集まったドゥーラのほとんどが自らも子育て中のため(孫のいるドゥーラも数名あり)、わが子が病気の時などに大きなストレスを感じるというのが、最も多かったコメントです。
家族や友人たちと何か大切な約束事をしていても、お産のためにドタキャンしなければならないことも多く、身を引き裂かれるような想いで仕事をしているといった声も同様に大きかったです。

かといって、組織化されたグループのなかで働きたいかというと、多くの人が首を横に振ります。とても興味深いことでした。自由な立場で働きたい、上から指図されないからこそ、いいケアが提供できる、と口々に言うのです。


助産師からの転向
救命処置の一日トレーニング
救命処置の一日トレーニングでCPR(心肺蘇生法)などを学んできました

私は自分をドゥーラとして養成して下さったUKのアデラ・ストックトン先生のことを思い出しました。
アデラ先生はもともと助産師だったのですが、ある時に、施設勤務では自分のしたいケアができない、とドゥーラへ転向しました。

なぜ独立開業助産師ではなく、ドゥーラだったのか、詳しい背景までは分からないのですが、ご本人曰く、‘お産のエキスパートではなく、母親と同じ目線に立つことができる「素人」であることが、よりパワフルに働くことがある’と感じたからだそうです。


求められる役割は?

確かに、産みゆく女性をケアする助産師さんのあたたかい手と、ドゥーラのケアとは限りなく似通っています。ですが一方は、国家資格を持つ「専門家」。もう一方は「素人」です。ベースが根本から違うのですから、比べることは出来ません。

日本はもとより、UKやアメリカにおいても一般的にまだまだ認知されておらず、また仕事内容も幅広いドゥーラという職業。今回あらためて、独立開業助産師とドゥーラ、それぞれに求められる役割像とその共通点を垣間見たような気がします。 そして、サミットを企画したパット先生の「私は助産師であり、ドゥーラです」と自己紹介する横顔にさまざまな可能性を見ていたのは私だけではなかったはずです。


ヒューストンのヘルス・ミュージアム
ヒューストンのヘルス・ミュージアムには妊娠の経過が分かり易く展示されている

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著者プロフィール
木村章鼓(きむら あきこ)
英国在住のドゥーラ&バースファシリテーター
エジンバラ大学大学院 医療人類学(Medical Anthropology) 修士
約65カ国を訪問し、世界のお産に興味を持つ2児の母
「ペリネイタルケア」(メディカ出版)にて「ドゥーラからの国際便」を連載中
HP http://nomadoula.wordpress.com/