第38回 ヒューストンのドゥーラたち、やっぱり一匹狼?
今まではそのほとんどが一匹狼であったはずのドゥーラたちが、一同に会した夜を境に、一気に組織化していこうとする動きについて前回触れました。ですが、その後、やはり、というか、その勢いは現在、ピタッと止まっています。
きっかけは、あるドゥ―ラの一人が投稿した「あの夜、お産の立会いやその他の事情で忙しくて参加できなかったドゥーラたちはどうなるの?」という問いかけでした。中には反発を表明してメーリングリストを辞めていく人たちもいたせいで、勢いづいていた会の雰囲気がしぼんでいったのです。
参加者の間で盛り上がり、一気に進めましょう!という熱気あるムードは本来良いものですが、少々急ぎすぎていやしないか、という気持ちが私にもあったので、これは当然と言えば当然の流れでした。
ドゥーラコンファレンスの当日に参加することができずに、乗り遅れてしまった、と感じている方がいるかもしれません。ベテランのドゥーラだからこそ、依頼件数も多く、そのため多忙を極めていて参加したくてもできなかった方もあるでしょう。
エコ建材のべンチャー企業も参加したBIRTH。ロビーでは、安全な建材、塗料を使った子ども向けのデモも行われていました |
地元の助産師さんによる、母親向けの水中出産&ホームバースに関するトーク。おしゃれなファッションにも注目してしまいました♪ |
さらには、ドゥーラという肩書きが一般的になる以前から、この土地で地道にドゥ―ラ的な活動をしてきた女性たちもいます。今はおばあちゃま世代の、そういった方々をも人的資源として取り込んだ形での組織化はできないものでしょうか。
『出産革命のヒロインたち』(河合蘭 訳)を、折に触れて本棚から取り出しています。そこにも書いてあるとおり、正常で女性らしいプロセスとしての出産観を生かし続けるためアクションを起こしてきたのは、いつの時代にも母親たちです。そういうフロンティアの先人たちは、後世に名前こそ残らないけれど、立派な仕事を紡いできてくれたことに、今の時代の母親が感謝し、その労をねぎらうことはとても大切なことだと思います。
同じ意味あいで、産みゆく女性を支えてきた助産師さん、そしてドゥーラたちの存在も、経験の浅い私にとっては学びの宝庫で、それを無視して大枠を作り、先に進んだかに見えても、継続的な目的であるケアの質に向上がみられるとは思えないのです。
子産み子育てのフィールドで活躍してきた無名の経験者を敬う。そういった温故知新のこころに、きっと わたしたちは惹かれ、何か手を結び合ってできないか、と協力し合っていく過程で、(組織といった)時代にとって必要な形となって現れてくるのだと思えれば、今回のことも学びのひとつです。
ヒューストンにいくつかの自助グループは存在するにせよ、今回、再び、ゆるいつながりで結ばれただけの‘一匹狼’であることを望んだ私の街のドゥーラたち。 組織化への歩み寄りがいつか再び来るのであれば、その時まで、機の熟すのを静かに見守っていきたいと思います。
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木村章鼓(きむら あきこ)
英国在住のドゥーラ&バースファシリテーター
エジンバラ大学大学院 医療人類学(Medical Anthropology) 修士
約65カ国を訪問し、世界のお産に興味を持つ2児の母
「ペリネイタルケア」(メディカ出版)にて「ドゥーラからの国際便」を連載中
HP http://nomadoula.wordpress.com/