子育てママの休憩室

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第24回【我が家にカイコがやってきた(1)】

<カイコに見とれる>  赤ちゃん時代を連想する

保育園でカイコを飼うことになり、その「おすそ分け」が十匹、我が家にやってきた。

子どもたちはすぐにあきてしまい、桑の葉をとってきたのも最初の二日ほど。我が家の裏庭に桑が一本生えているので、なんのことはないのだが。私は「んもう! やっぱりね」とグチりつつ、せっせと桑の葉を食べさせている。

彼らは、体の前半分についている六本の足で器用に葉に抱きついて、無心に食べる。食べながら同時進行でウンチをする。手榴弾のような形の、真っ黒の。ひたすらおっぱいをのんで、何回もゆるゆるのウンチをしていた、子どもたちの赤ちゃん時代を連想する。いやいや、近頃のシュウヘイがメロンを食べ尽くして、皮までしゃぶっているところにそっくりだな。などと、カイコに夢中になっているのは私のほうだ。

カイコが"進化"した!

さて、カイコがうちに来てから約一週間。最初の一匹が糸を吐き始めた。そこで、保育園で教わったように、段ボールでしきりを作って個室待遇にしてやった。すると、しばらくどこに繭を作ろうかと思案するようにうろうろしたのち、せっせと壁に糸を張り巡らせ、ついに白い固まりの中に消えてしまった。テレビ番組の「ポケモン」ファンのエリに言わせると、「進化した」のだそうだ。

「『最後は蛾になるんだよ』と話したら、『蛾ってなあに?』と子どもたちが言うの。見たことないのかしらね」とは、保育園の先生の話。進化なんて難しい言葉を知っている割には、現実の生き物には疎いらしい。

保育園の帰り道、よく犬の散歩に出会う。エリは頭をなでるを楽しみにしている。動物に親しむ機会がもてるのはありがたいことだ。でも、「ママ、お願い。犬飼いたい」はないでしょ。カイコの世話もできないのに!

第25回【我が家にカイコがやってきた(2)】

<こんなに悩むなんて・・・>  繭になりました〜

我が家に十匹のカイコがやってきた。最初の一匹が繭になったと、先週ここで報告したが、次々とほかのカイコが後に続いた。さあ、どんな蛾が出てくるんだろう、と浮かれていたのもつかの間、自らの見通しの甘さに気づいて愕然とすることになった。

ある朝、カイコの里親である保育園の園長先生に「繭になりました〜」と報告したら、「この後どうするの?」という話になった。「蛾になって飛んでいくまで見てるつもりですけど」

そこに、シュウヘイの担任の先生が話に加わった。ご実家がかつて養蚕農家だったそうだ。
「その辺で少しパタパタするくらいで、すぐに、すーごくたくさん卵を産むよ」

えっ?! そんなにいっぱいカイコの赤ちゃんが生まれても困る。そうだ、近所の草むらに放しちゃおう。ねっ、それがいいよね。「でも、カイコって桑しか食べないから」

桑なんて、そんじょそこらに生えてはいない。うちの桑の木も、すでに丸裸だし。ってこては、飢え死に? どうしよう。

カイコの運命は?

保育園では、ゆでて中のカイコを取り出し、繭を使って工作をするらしい。先生がその話をしたら、すかさず子どもが「殺すってこと?」と言ったとか。要するにそういうことなのだ。だから気が進まない。

食べるためや生活のためならと仕方ないけど、あんなに楽しませてくれたカイコちゃんを石川五右衛門にするなんて。

その日から、私の頭の中はカイコの行く末でいっぱいになってしまった。

エリに意見を聞いたら、言下に「しかたないよ」ときた。「これでもう世話やかなくていいね」とも。冷たいなあ。ママの気を軽くしてやろうという優しさでもあるのだが。とにかく、この一言でカイコの運命は決まったのである。続きは次回のこのコーナーで。

第26回【我が家にカイコがやってきた(3)】

<絹糸はこうやって作るのね>  あー、五右衛門風呂!

カイコの繭をゆでる? それとも、死なせるのはかわいそうだからと、蛾になるまで見守って、卵がうじゃうじゃ生まれて、桑の葉探しに奔走する? その選択は、エリの一存で「五右衛門風呂」に決まった。

そこで、日曜日の朝、進まぬ気分を奮い立たせて、決行することになった。庭で、おままごとに使っているアルミ鍋に湯を沸かし、カイコに入っていただいた(?)のである。繭についていた桑の葉を一緒に入れたので、うっすら緑色の繭がゆで上がった。

絹糸って、こうやって作るんだなあ、と初めて実感。シルクのスカーフは、カイコが命をかけて吐き出した糸でできているのだ。天然素材といっても、植物性のコットンとはまるで異質の物なのである。

「おカイコさま」の経歴

カイコの顛末を、よこはま自然育児の会のメーリングリストで投げかけたら、若いお母さんから返信があった。子ども時代に横浜市都筑区中川町(当時は港北区)に住んでいたという、飯田由里さんだ。このあたりは、今やおしゃれな新興住宅地だが、当時は自然豊かな田舎町。
山の桑の木に、野生のカイコがいたそうだ。小学校で飼っていたカイコをもらったときは、ねずみ算式に子どもが増えて、お母さんが四苦八苦していたとか。

その頃彼女のおばあちゃんが「かいこは飼っちゃいけないよ」と言っていたという。素人がカイコを飼って病気を出し、それが養蚕農家にとびひしたら大変なことになるからだ。

なるほど、養蚕が日本の経済を支えた頃もあったんだものね。思いもかけず「おカイコさま」の経歴に思いを馳せることになった。

カイコに感謝しつつ、子どもたちと絹糸をとろうかな、それとも繭のままで何か作ろうかな、今度はちょっと楽しい悩みを抱えることになった。

第27回【アトピーに悩んでますか?】

よこはま自然育児の会で

手の湿疹と、かれこれ三十年近いつきあいになる。

十年ほど前に、薬だけでは解決できないと気がついた。食生活、睡眠、掃除、体を冷やさないことなど、要するに「キチンとした」生活をしていれば、体全体の調子がよく、湿疹も出ない。出てしまったら、「あらあら生活が乱れてるな」と襟をただす。手の湿疹は、私にとって「体調不良お知らせランプ」のようなものだ。自分の体は自分で管理し、手に負えない時は医療に助けてもらう、という考え方をするようになった。

ここに行き着くまでに、あちこちの講演会や料理教室、本などに情報を求めた。私が最も頼りにしている、子育て版の情報源は「よこはま自然育児の会」である。心も体もナチュラルな育児をめざすお母さんの集まりだ。

医療や保育などの専門家の講演会やイベントの開催、会報の発行が主な活動である。現在会員は約450名。神奈川県下のお母さんが中心だが、助産婦さんや県外在住の人も多い。

まりもちゃんのアトピー日記

先日の例会は、「まりもちゃんのアトピー日記」(情報センター出版局)などの著書がある、竹中恭子さんの講演だった。

竹中さんのお子さんが赤ちゃんの時、なんとかアトピーを治してもらいたいと、横浜中の病院を訪ね歩いたそうだ。でも、それは回り道だったかもしれないと言う。まず親が自分の子どもを観察し、暮らしを見直すことが大事。要チェック項目は、甘い物や果物、油物の多い食生活になっていないか、体を冷やしていないかなど。また、環境汚染、食品に何が入っているかわからない、という時代だから、アトピーはけして人事ではないですよ、とも。

ちなみに、うちの娘もバリバリのアトピーちゃん。子どもの体は自分のようにはコントロールできないのが、悩みの種だ。

第28回【夫婦喧嘩のよくあるパターン】

「だらしないぞ」

いつも元気な三児のママ、Kちゃんがため息をついた。昨日の夜、激しい夫婦げんかをしたのだという。その原因は……

夜、子どもたちが部屋中を派手に散らかして、そのまま遊び疲れて寝てしまった。そこに、パパが帰宅。「だらしないぞ」

と、子どもたちを起こして片づけさせようとする。「そこまですることないんじゃない」というKちゃんと、「いや、けじめが大事」と譲らないパパ。

あら、うちでもこの類のもめ事がよくあるのよ! そこで、にわかにママ共同戦線の舌鋒が爆発した。

ママの論理

(その1)子どもの仕事は遊びでしょ。本業に精を出してバタンキューなんて、エライ!

(その2)台所用品をおままごとに使ったって、食卓いすを倒して電車ごっこしたっていいじゃない。子どもたちのアイデアは、泉のように湧いて枯れることがない。けじめがつかないなんて言わないで。

(その3)子どもたちが夢中で遊んでいると、それを横目で見ながら、いい気分で家事がはかどる。「あれするな、これするな」と言っていたら、お互い息が詰まっちゃう。

(その4)号令一つで子どもたちが片づけるわけがない。その気にさせるには、こちらも少しはおもちゃを拾ったりしなければならないのだ。ご飯、食器洗い、お風呂……と、過密スケジュールの夜のひととき、ママの時間とエネルギーが足りない日もあるのだよ。

つまり、家事・育児の全体像を見て、その中で発言すべし、と言いたいわけ。ただ、うちの場合、リビングに私の書類の山が二つ、三つ、という状態では、強気に出られない。聞いてみると、Kちゃんのうちも似たようなものらしい。「パパが出張中の我が家は緩みっ放しなの。うるさい人がいないのも困るね」

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著者プロフィール
西井紀代子(キヨ)。当ホームページ・ままメルを運営するママ・チョイス代表。1994年生まれのエリと1997年生まれのシュウヘイの母です。子どもたちが5歳と2歳のときにエッセイの連載を始めました。子どもたちに言わせると「ぜんぜんかまってくれない」面倒見の悪い母。まったくその通り、の私です。