第14回 出産、近づく(妊娠37週)
どんどん大きくなってる!
37週の健診に出かけた。
助産婦さん「おなか、立派になったねえ。赤ちゃん、大きそう」
ヨーコ「そうなんです。どんどん大きくなっている気がする。体重も増え続けているし。大きくなりすぎる前に生まれたほうがいいかしら」
助産婦さん「赤ちゃんは完全にできあがってからのほうがいいよ。ゆっくりでいいよ」
赤ちゃんは元気。おなかの中でぼこぼことよく動くが、私のほうは体がだるく、動くのがおっくうになってきた。少し意識して体を動かすようにしたほうがよさそうだ。
その日の夕方、仕事を終えて保育園にアチャを迎えに行き帰宅したら、急に気分が悪くなった。トシに早めの帰宅をお願いするメールを送って、居間の隣の和室に布団を敷き、横になった。
「ママ、赤ちゃん生まれそうなんだって」
帰宅したトシ「具合、どう?」
ヨーコ「うーん、気持ち悪い」
子どもたちにむかって
トシ「ママ、赤ちゃん生まれそうなんだって」
ヨーコ「いや、まだ生まれないよ」
確かにまだ生まれないけど、お産は近いかなという感じがしてきた。わくわくする気持ちとどきどきする気持ちが混在している。「落ち着こう、落ち着こう」と心の中で思う。
トシが用意してくれた夕食を少し口に入れ、子どもたちと早めに床についた。 夜中に目が覚める。時計を見ると午前2時半。外はまだ真っ暗である。トイレに行くとピンク色のおりものがあった。おしるし? おなかもときおりしくしくと痛む。前駆陣痛かな。少しずつお産の準備が始まっていると実感する。
チビスケはママのおっぱいを飲むんだよ
さて、おなかの子が男の子らしいと分かって、家族の間でいつのまにか赤ちゃんのことを「チビスケ」と呼ぶようになった。家族の会話の中にも「赤ちゃん」とか「チビスケ」ということばがよく出てくるようになった。
アチャ「赤ちゃん生まれたらおっぱい飲むの?」
ヨーコ「そうだよ」
アチャ「おみせ(近所のスーパー)であかちゃんのミルクあったよ。かうの?」
ナツ「チビスケはママのおっぱい飲むから、ミルクはいらないんだよ」
さすがナツ。よく分かっている。ナツもアチャも母乳で育った。助産院ではおっぱいの飲ませ方、すわせ方を丁寧に教えてくれる。基本的に赤ちゃんには母乳以外のものを与えないからおっぱいで育てるのが当たり前という感覚になる。
ナツは2歳2ヶ月、アチャは1歳7ヶ月までおっぱいを飲んでいた。久しぶりに味わうことになるチビスケとのおっぱいタイム、今から楽しみだ。
命名、ラクダくん(?)
ナツは「チビスケ」より「チビタロウ」がいいと主張する。
ヨーコ「チビスケはおなかの中にいるときの名前だから、生まれたら別の名前をつけるよ」
ナツ「なんていう名前?」
トシ「○○はどうかなと思っているんだけど」
ナツ「ふーん。ねえねえ、ラクダくんっていうのはどう?」
トシとヨーコ「ラクダくん??」
ナツ「うん、ラクダくん。かわいいでしょ」
トシ「うーん、音の感じはいいけどねえ(苦笑)」
パパ「会心の名前」
7年前、ナツは助産院のおふろで生まれた。湯船の中でたった今生まれたばかりのナツを抱いた。静かな時間だった。助産婦さんに「どっちかな」と声をかけられるまで、性別のことなんか忘れていた。女の子だった。
ナツのときは生まれるまでどちらか分からなかったから、女の子の名前と男の子の名前を1つずつ考えていた。二人目のアチャが女の子だったから、最初に考えてあった男の子の名前はまだ封印されている。男の子だったらその名前をつけようとトシと話している。
ナツの名前もアチャの名前も、トシに言わせると「会心の名前」だそうだ。もしも3人めが女の子だったら・・・ トシは出生届の期限である2週間後の締め切りに追われながら必死に3つめの「会心の名前」を考えなければならない。
大変そうだが、それはそれで楽しいかもしれない。
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