第16回 自宅出産? それとも助産院?(妊娠39週)
今の気持ちを伝えたい
1日考えて、翌日、助産院に電話した。
ヨーコ「夜中におなかが痛くなって、このまま陣痛になったら動きたくないなあと思ったんです。自宅で産んだほうがいいかなと」
サイトーさん「ご主人はなんて言ってるの?」
ヨーコ「『陣痛きたらサイトーさんに来てもらうの?』って言ってました。夫もそうしてもいいと思っているみたい。土日は夫がいるから陣痛がきたらいつでも助産院に行けるんですけど(今日は金曜)、月曜になったらまたふつうの日が始まるし、夜中におなかが痛くなって、急にサイトーさんに来てくださいというのも申し訳ない気がして、今のうちに『こんな気持ち』でいるってことをお伝えしておこうと思って電話しました」
サイトーさん「なんか、わけ分からなくなってるんだね」
ヨーコ「実はそうみたいです。すみません、はっきりしなくって・・・」
あれれ? 自宅出産でお願いしますというつもりで電話したのに、自分で自分の気持ちがわからなくなってきた。サイトーさんには私の心の迷いをすっかり見抜かれていたようだ。
サイトーさん「じゃ、いちおう荷物(お産に必要な衛生用品のセット一式)おうちに持っていっておく?」
ヨーコ「はい、じゃ夫に仕事の帰りに取りに寄らせます」
聞いてもらってほっとした
自分の気持ちが分からなくて、じたばたしている自分がいる。我ながらなにやってるんだかと思うけれど、それを受け止めてくれる家族や助産婦さんがいることは心強い。
サイトーさんが電話の最後にこう言った。
「あまり先のことまで考えなくていいよ」と。
そうですね、そうしよう。その日はいずれ必ずくるのだから、あまり考えすぎないほうがいい。丸1日悩んでいたのに、サイトーさんに話を聞いてもらったらほっとした。
結局私は助産院で産むという選択肢も捨てきれない。なぜ?
助産院との出会い
ナツを妊娠して、初めて助産院を訪れたときのことを思い出す。
電話帳で助産院を探して電話をかけた。その日のうちにおじゃました。山の中にあるふつうの一軒家。
居間でお茶をごちそうになりながら、1時間くらい話を聞いてもらった。最初の妊娠で不安であること、病院へ行ったけど医師にはその不安を話せなかったこと、その病院で産みたいと思えなかったこと。自然に産みたいと以前から思っていたこと。
話を聞いてもらっていると不安な気持ちがスーッと引いていくのが分かった。助産婦さんや助産院からあたたかさが伝わってきた。ここで産みたいと思った。
私にとって助産院とは…
そして数ヵ月後、助産院でナツを産んだ。産後もおっぱいのケアにちょくちょくおじゃました。育児の悩み事も相談できた。3年後にアチャが生まれた。そしてまたおっぱいのケアでお世話になった。
最初の出会いから7年。今や助産院は私にとって、友達の家のような、近所のおばちゃんの家のような、特別な(いや、特別でないといったほうがいいのかもしれない)場所なのだ。
私だけでなく、私の家族にとってもそうなんだと思う。だから我が家では、ナツもアチャも夫も私も、助産院のことを「サイトーさんち」と呼ぶ。
電話を切ってから、ずっと気になっていた庭の草むしりをした。無心に草を抜いた。つかの間だが不安な気持ちを忘れることができた。陣痛がこないかなとちょっと期待したけれど、チビスケはまだおなかの中にいたいらしい。今もぼこぼこと元気よくおなかの中で動いている。
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