第20回 脱衣所で、つるっと胎盤が出た!(生後0週/産後のひととき)
ぐいっぐいっとおっぱいを吸う
胎盤が出る前に、風呂から上がることにする。右手でチビスケを抱き、左手でトシにしがみついて立ち上がる。転ばないように気をつけながら浴槽から出て、脱衣所に敷いたマットの上に横になった。チビスケはあまり泣かずおとなしい。
横になったまま、チビスケの小さな唇を右のおっぱいに近づけてみる。乳首をくわえさせるとすぐに吸い始めた。ぐいっぐいっと吸っている。ナツのときもアチャのときも、生まれてすぐにおっぱいを飲ませようとしてみたが、そのときは本当に吸い付くことはできなかった。だからチビスケの力強い吸い方にびっくり。男の子だからかな。
へその緒はドクドクしてる

下/チビスケと一緒にベッドに。ナツ、早くも赤ちゃん返り?
チビスケのへその緒はナツが切ることになった。生まれてしばらくはまだへその緒の中の血液が流れていて、ドクッドクッと拍動している。
ヨーコ「ナツ、へその緒、さわってごらん」
助産婦さんがナツにへその緒をさわらせてくれた。
ヨーコ「ドクドクしている?」
ナツ「うん、してる」
ヨーコ「このドクドクが止まってから切るよ」
ここでは、拍動がおさまるのを待ってからへその緒を切る。ナツが生まれたとき、そうすると聞いて、とてもいいなあと思った。おなかの赤ちゃんに栄養を送り続けてくれたへその緒。へその緒に感謝するって変かもしれないけど、そのへその緒が役目を全うするまで待つことが、へその緒に対する「ありがとう」の気持ちの表れな気がした。
へその緒を切る瞬間が好き
ヨーコ「あ、はさみ持ってきたのに、消毒してもらうの忘れちゃった」
助産婦さん「特別なはさみ?」
ヨーコ「ナツは左利き。右利き用のはさみだとうまく切れないかもしれないと思って、家から左利き用のはさみを持ってきたんです」
助産婦さん「そうか。ナッちゃん左利きなんだ」
ヨーコ「でも、大丈夫だと思うから、ナツ、そのはさみで頑張ってごらん」
ナツ「うん、わかった」
助産婦さんが用意してくれたはさみで、ナツがパチンとへその緒を切った。1度で上手に切れた。
ナツとアチャのへその緒は、トシが「僕は遠慮します」というので私が切った。そのときもなんとなく感じていたことだが、今、ナツがチビスケのへその緒を切るのを見ながら、私はこの瞬間が好きだと改めて思った。なぜだろう。10ヶ月間おなかの中にいた赤ちゃんが別の一人の人間として私から離れる瞬間。チビスケと離れてさびしいとか、チビスケが無事に生まれてうれしいとか、そういう感情とはちょっと別の、でも私にとっては特別の、言ってみれば「儀式」のようなものなのかな。
チビスケ、これからは自分で生きていくんだよ。いっぱい飲んで大きくなれ!
なんとなく胎盤が出そうな感じ
しばらくして、次は胎盤が出てくる番だ。助産婦さんが胎盤に付いているほうのへその緒を少し引っぱった。ちょっと嫌な感じがしたので、そう伝えると
助産婦さん「自分で出せる?」
ヨーコ「やってみます」
助産婦さん「じゃ、おなかを自分ですこーし押してみて」
下腹部をそっと押してみる。なんとなく胎盤が出そうな感じがした。
ヨーコ「出そうな気がする」
助産婦さん「じゃ、赤ちゃん産むような感じで出してごらん」
フーッ、ウーッといきむと、つるっと胎盤が出てきた。「胎盤、見せてください」と言うと、助産婦さんは金属のお盆に入った胎盤を私が見やすいように頭の横に持ってきてくれた。ナツにも見せよう。
ヨーコ「ナツ、ちょっとおいで」
と居間のほうへ行っていたナツを呼んだ。
ナツ、アチャ、ありがとう
ヨーコ「ナツ、見てごらん。これが胎盤だよ。ここからへその緒を通って、チビスケに栄養がいっていたんだよ」
ナツ「さわってもいい?」
ヨーコ「私もさわってみたい!」
胎盤を指でつついてみた。もっとぷよぷよしているかと思ったら、けっこうしっかりとした硬さがある。助産婦さんが見やすいように胎盤を広げてくれた。卵膜や胎盤が子宮の壁にくっついていた部分もちゃんと分かった。ナツは助産婦さんの説明を興味深く聞いていた。
胎盤が出て、後の処置も終わり、30分くらいそのまま横になって休んだ。チビスケにおっぱいをあげていると、ナツとアチャがやってきた。アチャの頭をなでながら言った。
ヨーコ「アチャ、ママを助けてくれてありがとうね。ナツもありがとう。ママ、とてもうれしかったよ」
アチャは答えなかったけど、うれしそうにニコニコと笑った。そしてチビスケの頭をなでながら何度も何度も「かわいい」と言った。

| 前へ | 次へ |
