3人目がやってきた!

第21回 体全部で子どもを産んだ、そして今 (生後0週/入院生活)

アチャ、眠れるかな

個室なので周りに気兼ねすることなく、家族も赤ちゃんとゆったりと過ごせる。撮影アチャ
個室なので周りに気兼ねすることなく、家族も赤ちゃんとゆったりと過ごせる。撮影アチャ

チビスケと私は洋室に移動して、セミダブルのベッドにいっしょに横になった。しばらく家族5人の時間を過ごしたあと、トシとナツとアチャは家に帰っていった。明日からおばあちゃんが手伝いに来てくれるが、今夜だけは父と娘で過ごす夜。アチャ、ママがいなくてちゃんと眠れるかな。

「おやすみ」と3人を送り出して横を見ると、チビスケがすやすやと眠っていた。ああ、ほんとうに生まれたんだ。幸せな気持ちに包まれて、私も眠りについた。

入院生活はすごぶる順調。会陰(えいん)は裂傷もなく痛みもない。助産院では会陰切開をしない。赤ちゃんの出口はお産が進むにつれて少しずつやわらかくなり伸びるようになるのだ。それでも急に強い力がかかると切れてしまうので、陣痛がくると助産婦さんが会陰を押さえてくれる。蒸し暑い浴室の中で2時間も私の陣痛に付き合ってくれた助産婦さんってほんとうにすごい。

後腹の痛み

初秋の清里に行きました。宿の裏にある散策路。森の奥へ奥へと進みます
分かれ道。どっちへ行く?
上/初秋の清里に行きました。宿の裏にある散策路。森の奥へ奥へと進みます
下/分かれ道。どっちへ行く?

森の中にはこんなきのこも
森の中にはこんなきのこも

産んだ翌朝には自力でトイレに行き、おしっこも出た。ところが3日たっても排便ができない。赤ちゃんの出口と肛門は近いところにある。裂傷がなかったとはいえ、お産のあとはうんちが出にくい。助産婦さんに相談すると、便通がよくなるように食事や飲み物に気をつかってくれた。うーん、退院までになんとかしたいなあ。

子宮の収縮も問題なし。そのかわり後腹(あとばら)が2、3日痛かった。とくにチビスケが乳首に吸い付くとき、下腹がキューと痛む。赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激が子宮の収縮を促すのだから、ここは我慢、我慢。

後腹の痛みは経産婦(初めてのお産でない産婦)に多いそうだ。私の場合、ナツのときも痛かったので覚悟していたが、これがとにかく痛い。思わず「いたたー」なんて言ってしまうくらい痛いのだ。もう産み終わったはずなのにー! 陣痛の痛みは我慢できるのになぜかこの後腹の痛みは耐えがたい。陣痛はもうすぐ赤ちゃんに会えると思えるからきっと頑張れるに違いない。

赤ちゃんがおっぱいを出してくれる

おっぱいは産後3日目くらいから出るようになった。赤ちゃんが乳首を吸う刺激が母乳の分泌を促すから、初めは出ないおっぱいをチビスケに吸ってもらう。

「赤ちゃんはお弁当と水筒を持ってママのおなかから生まれてくるの。だから2、3日おっぱいが出なくても心配ないよ」とナツを産んだとき、助産婦さんが言っていた。

ナツは2550グラムと小さく生まれたからおっぱいが出なくて大丈夫かなと心配したけど、助産婦さんのこの言葉を聞いて安心したんだっけ。3188グラムとやや大きめで生まれたチビスケは心配ないね。

おっぱいの吸い方も似るんだね

新鮮な牛乳で作ったアイスはおいしいね
四つ葉のクローバー探し。ヨーコも子どものころ原っぱでよく探しました
アチャ、作品づくりに挑戦。かわいいクマさんができました
上/新鮮な牛乳で作ったアイスはおいしいね
中/四つ葉のクローバー探し。ヨーコも子どものころ原っぱでよく探しました
下/アチャ、作品づくりに挑戦。かわいいクマさんができました

チビスケがおっぱいを吸うのを見て助産婦さんが言った。
助産婦「ナツの吸い方にそっくり」
ヨーコ「ほんとうだ。こんなところも似るんだ(笑)」

チビスケは唇を内側に巻き込むようにして吸おうとするので、うまく吸い付けない。
「ほら、チビスケ、ベロをもっと前に出してこらん。唇はチューリップみたいにね」と助産婦さんがチビスケに吸い方を教える。
赤ちゃんもママもこうやって飲み方、飲ませ方のコツが分かってくる。チビスケも私もこれから少しずつ上手になろう。


私の母は、私と2人の弟を病院で産んでミルクで育てた。そういう時代だったのかなと思う。弟たちが母のおっぱいを吸う姿を見たことがなかった。だからなのか、ナツを産むときも母乳で育てたいという固い意志があったわけではない。ところが子どもを産んで、自分の体と向き合ったら、自然に「母乳で育てるのがふつう」と思えた。

体ってほんとうによくできている。子どもを産むって体全部を使う。子宮も産道もおっぱいも、全部がちゃんとつながっている。チビスケと私は、へその緒ではもうつながっていないけど、今、チビスケを抱っこして、一心におっぱいを吸うチビスケを見ていると、チビスケと私は今もつながっていると感じる。

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著者プロフィール
著者
根本陽子(ヨーコ)。1997年、初めての子どもを妊娠し、自分の望む出産を求めて情報を集め始める。これがきっかけとなり、「お産情報をまとめる会」(下記参照) のメンバーとなる。助産師さんに介助してもらい、長女は水中で、次女は陸で、3人目は再び水中で出産。長女の出産を機に勤務していた研究所を退職。その後フリーランスで辞典の執筆、英語講師、日本語教師、中学校の国語の講師など「ことば」に関する仕事をいろいろして、現在に至る。家族は、片付け好きで子どもの保育園の送り迎えも引き受ける夫・トシ、お姉ちゃんらしくそこそこしっかり育つナツ(小学5年)、自由奔放に心のおもむくままに育つアチャ・(小学2年)、そして2005年5月に生まれたシュンとの5人家族。(写真は、アチャが赤ちゃんだった頃のヨーコ)
お産情報をまとめる会
わたしのお産サポートノート
神奈川県と東京都町田市の産院情報「わたしのお産」、第二の母子手帳「わたしのお産サポート・ノート」を編集した、お母さんグループ。「サポート・ノート」は自分のこと、おなかの赤ちゃんのこと、医師・助産師との対話などを書きつづりながら妊娠生活を送るための本。ヨーコはここで、自分自身の記録を大公開しつつ、出産に向かう(実際の書き込み欄は小さくて、だれでも簡単に記録できるものです)。