第22回 「かわいい」は連鎖するのだ!(生後1週/命名)
7年間眠っていた名前
7年前、男の子が生まれたらつけるはずだった名前がある。ナツが女の子だったのでその名前はまだトシと私の心の中にだけある。3人目が男の子らしいと分かり、その名前をつけようと思っていた。でも、本当にそれでいいのかな。ナツとアチャの弟として生まれたチビスケにはもっとふさわしい名前があるのではないか。
我が家では子どもの名前を考えるとき、名づけの本よりも国語辞典が活躍する。仕事柄、家には辞書がたくさんある。チビスケが生まれた日も、陣痛が始まっていた私は布団の上にころがって、陣痛の痛みの合間にその名前にかわる名前がないかと辞書をめくった。
チビスケが生まれたあともトシが産院にくるたびに話題はチビスケの名前のことばかりだった。トシと二人で悩みに悩んで、最後はやっぱり「私たちの家に生まれた最初の男の子だから」とその名前をつけることにした。ナツとアチャにも相談しなきゃね。家族なんだから。
「シュンちゃん」に決定!
トシ「家族会議を始めるよー」
ナツとアチャとヨーコ「ハーイ!」
居間のテーブルに全員集合。チビスケも私の腕の中で同席。自分の名前が決まるんだもの、気になるよね。
トシ「ママと相談してチビスケの名前は『シュンタロー』にしようと思います。シュンタローがいい人?」
ナツとヨーコ「ハーイ!」
アチャ「・・・」
あれ、アチャは? 場の雰囲気を読んで、こんなふうにちょっとひねくれた行動をとるところがアチャらしい。最後はアチャも納得してめでたく「シュンタロー」に決定! こうしてチビスケは「シュンちゃん」と呼ばれるようになった。
赤ちゃんのいる生活を楽しもう
赤ちゃんのいる生活は思いがけず楽しかった。赤ちゃんってこんなにかわいかったっけ? おっぱいを飲み、寝て、泣いて。そんなシュンがただただ愛おしい。ナツとアチャも暇されあればシュンのそばに行く。「寝ているから静かにね」と言っても指で頬をつついたり抱っこしたりする。とにかくかわいいらしい。シュンをかわいがるナツとアチャの姿を見ていると、ナツやアチャまでかわいく思えてくる。「かわいい」は連鎖するのだ。
初めての子育てのとき、ナツをかわいいと思う気持ちとは別のところで、ナツと2人きりの毎日がつらかった。2人目のときは、ナツがやっと3歳になるころ。ナツもまだ手がかかったし、仕事も忙しく、ばたばたと毎日を暮らしているうちに気がついたらアチャの赤ちゃん時代は終わっていた。そう、赤ちゃんの時期は本当にあっという間に終わってしまう。今のうちに楽しまなくちゃ。今度は、ナツとアチャと一緒にシュンのいる生活を楽しもう。
トシは、シュンのいる生活を「新鮮」と言った。うん、そのことば、ぴったり。3人目なのに赤ちゃんが新鮮というのも変な気もするが、私も同感だった。心に余裕をもって赤ちゃんに接することができるからなのかな。
おねえちゃんたちの、おっぱいとおねしょ
シュンがいるようになってから、ナツはときどき「ナッちゃんもおっぱい飲みたい」と言うようになった。私には「おっぱいはシュンのもの」という気持ちがあり、ナツに吸わせるのは正直気が進まない。でも、ま、本当に飲みたいわけじゃないだろうし、ちょこっと吸わせてやることにした。「飲んでもいいよ」と答えると、ナツは少し恥ずかしそうにおっぱいに口をつけた。それでおしまい。気が済んだらしい。
アチャは毎晩のようにおねしょをするようになった。まだ4歳だからおねしょをしてもおかしくはないけれど、ほとんどしなくなっていたので、環境や気持ちの変化からきたものだろうと推測できた。
ナツの「おっぱい飲みたい」もアチャのおねしょも、2、3ヶ月続いて、いつのまにか、なくなった。
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