第23回 何かあってからでは遅い!と反省した、迷子事件(生後4か月)
「横浜トリエンナーレ」には、不思議なアートがいっぱい
運動会に遠足、保育園と小学校の秋の行事が一段落したある日曜。小春日和で暖かい。久しぶりに家族で電車に乗ってでかけることにした。車に頼った生活をしていると、普段なかなか子どもたちと電車やバスに乗る機会がない。実は2週間後に2年ぶりの海外旅行を控えている。旅行の練習にちょうどいいね。シュンが生まれてから家族5人で電車ででかけるのは初めてだ。ナツ、アチャ、シュン、でかけるよー!
行き先は現代美術展「横浜トリエンナーレ」。不思議なアートがたくさんあって、子どもも大人も不思議の世界に入り込んだようで、みなそれぞれに楽しめた。海や空、風景も堪能した。
1日ゆっくり遊んで、満足感と適度な疲労感を感じながら夕方家の最寄駅まで帰ってきたとき、事件が起きた。アチャがいなくなったのだ。
助けて、おまわりさん!
改札を出るとき、アチャが改札機に切符を入れたいと言った。アチャが切符を通して、その後ろをシュンのベビーカーを押しながら私が改札を抜けた。出たところでトシと一言二言言葉をかわした後のことだ。
ヨーコ「あれ、アチャは?」
アチャの姿が見えない。駅の構内はそれなりに人が多かった。近くにいるだろうからとトシが探した。ナツとシュンと私は、アチャがもどってきたらすぐわかるようにと見やすい場所に立って待った。
10分探してもアチャは見つからなかった。私たちだけでは探しきれないと判断して、駅構内の警備員さんにも探してもらったけど見つからない。駅前の交番のおまわりさんに事情を話すと「探す手配をしましょう。手続きが必要なので交番まで来てください」と言われた。
「冷静に冷静に」と、自分に言い聞かせる
「もしかしたら家に帰っているかもしれない」
トシは道中を探しながら家に行ってみることにした。ナツとシュンと私が交番に行こうと地上に出ると外はすでに暗かった。アチャ、どこにいるの? 責任感の強いナツは事態の深刻さに気づき始めて落ち着きがなかった。ナツを不安にさせてはいけない。私も「冷静に冷静に」と自分に言い聞かせた。
交番で手続きをしていると、自宅にもどったトシから「アチャが見つかった」と連絡が入った。よかった、よかった。
迷子に「させてしまった」
家に帰ってからアチャに尋ねた。
ヨーコ「どうして先に一人で帰っちゃったの?」
アチャ「だって、パパもママもだれも来ないんだもん」
ヨーコ「そっか。パパもママも来なくてごめんね。でも一人で行ってはだめなんだよ。必ずパパやママといっしょにいてね」
アチャ「うん。ごめんなさい」
アチャは迷子になったんじゃない。私たちが迷子にさせてしまったのだと思った。アチャは先に自宅まで帰ってきて、誰も来ないので家の前で自転車に乗って遊んでいたらしい。しばらくしても誰も帰ってこないので「これはおかしい」と思ったようだ。トシがアチャを探して自宅までもどってきたとき、アチャは泣きながら玄関のドアを「開けて、開けて」と叩いていたという。
小さな子どもが犠牲になる事件が相次いでいて、ひと事ではない。今回は無事見つかったからよかったけど、何かあってからでは遅い。
子どもの気持ちは子どもの方が分かるらしい
その晩、子どもたちを寝かしつけてから、夫婦で反省会を開いた。確認したことは2つ。
1.トシも私もお互いに相手が見てくれていると思って気がゆるんでいた。1日遊んでみんな疲れていたし、家の近くまで帰ってきていて、緊張感が欠けていた。シュンが生まれて、子ども一人ひとりに十分に目を配ることが難しくなっている。それでも決して子どもから目を離さないこと。
2.まさかアチャが一人で家まで帰れるとは思わなかった。子どもの成長を甘く見ないこと。
そういえば、駅でアチャを探しているとき、ナツが言った。
ナツ「アチャ、家に帰っているかもしれないよ」
トシも私もその可能性は低いだろうと思い、家に探しに行かなかった。もしあのときトシか私がすぐに家に向かっていれば、これほど大事にはならなかった。子どもの気持ちは子どものほうが分かるのかもしれない。
さあ、今回の出来事を教訓にして、旅行の準備を始めよう。行き先は家族みんなが大好きなシンガポールだよ。
前へ | 次へ |