第28回 子どもがいても仕事がしたい!(生後9か月)
あれはマタニティブルーだったのかも
7年前の初夏、トシと私の初めての子、ナツが生まれた。生まれたばかりのナツを胸に抱いて、ただただ愛おしいと思った。慣れない手つきで小さなナツを抱くトシを見て、とても幸せだった。
しかし、赤ちゃんのいる生活が始まると、突然の環境の変化に、私の心がついていかなかった。1日じゅう狭いアパートの中でナツと2人きりで過ごす毎日。夫以外、誰とも話さない日が続く。毎日夕方になると、ナツを抱っこして外へ出て、トシの帰りを待った。今思えば、あれはマタニティ・ブルーだったのかもしれない。
この間、シュンを連れて子育て支援センターに行ったとき、思った。
「ああ、こういうところが、ナツのときにあったらよかったなあ」
赤ちゃんと一緒に行けて、ちょっとした話を聞いてもらったり、相談できたりする場所。赤ちゃんも楽しめる場所。初めての子育てのときにこういうところがあったら、赤ちゃんだったナツとの時間をもっと楽しめたんじゃないかな。ちょっと惜しいことをした気分になる。
仕事を見つけたら、子育てが楽しくなった
ナツと向き合って必死に子育てしていたあのころ、ナツはかわいいけれど、別の世界も欲しかった。私にとってはそれが仕事だった。赤ちゃんがいても、やっぱり仕事がしたい!子育てしながらできる仕事を探そう。新聞の求人欄で、在宅でできる仕事を探した。
最初に見つけた仕事は、辞典の原稿を書く仕事だった。夜、ナツが寝付いてからパソコンに向かった。「私も役に立っている」という感覚が、無性にうれしかった。
その次に見つけたのは、英語の先生の仕事だった。「子どもが英語を習いたいと言っているんだけど、教えてくれないか」と声をかけてもらったのがきっかけだった。ナツを連れて教えに行った。レッスン中は生徒さんのお母さんがナツを見てくれた。
仕事を通じて外とのつながりをもつようになったら、子育ても楽しくなった。
学生だったころは、「働く」というと、会社に入ってお給料をもらって、子どもが生まれたら産休をとって、そのあとは保育園預けて…なんていうイメージしかもっていなかった。子育てしながら、在宅で働く。こういう働き方もあるんだ! 新鮮な驚きだった。
子どもは、ちゃんと知っている
在宅での仕事にも、悩みはある。原稿の締め切り間際、切羽詰ってくると、夜、子どもたちを寝かしつけてからまた仕事をする。ある日、夕ごはんを食べているとアチャが言った。
アチャ「ママ」
ヨーコ「なに?」
アチャ「今日もお仕事あるの?」
ヨーコ「あるよ。どうして?」
アチャ「アチャ、ママと寝たい」
ヨーコ「アチャが寝るまで一緒にお布団にいるから大丈夫だよ」
アチャ「ママ、ずーっとアチャと一緒に寝て」
アチャは勘の鋭い子だ。アチャが眠った後、私がそっと布団から出るのを知っているのだ。私が忙しそうにしているのを見て、何か感じたのかな。子どもはちゃんと見てるんだなあ。その夜は、アチャが寝付いた後も、いつもより少し長い時間、アチャの隣で添い寝をした。
みんなで育てようよ!
我が家では、育児も家事も余裕のあるほうができることをする。トシも保育園の送り迎えや食事のしたくをするし、小学校の学級懇談会にも参加する。夫婦だけでやりくりができないときには、おじいちゃんやおばあちゃんに手伝いを頼むこともある。子育ては、いろんな人の手を借りて、大勢でしたほうがいい。ナツ、アチャ、シュン、3人の子どもと暮らしていて、心からそう思う。
地域のファミリーサポート制度や保育園の一時保育、民間の託児施設、可能性はいろいろある。役所に問い合わせたり、電話帳やインターネットで探してみたり、情報を集めておくと安心。隣近所や友達、助けを頼める知り合いも作っておけるといいね。そして困ったときや疲れたときは、遠慮しないで助けを借りよう。
子育ての責任は重い。だから、一人で背負い込まないで、みんなで育てようよ。未来ある私たちの子どもたちを。
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