3人目がやってきた!

第30回 新しい生活、シュンとナツ(生後10か月)

あれ? シュンの声がする

こいのぼり
こいのぼりを出しました。シュン、記念撮影

シュンが保育園に入園して2週間がたった。自宅で原稿やパソコンに向かっていると、シュンの泣き声が聞こえた気がして、手が止まるときがある。隣の部屋でシュンが寝ていると錯覚して、「あ、シュン、起きたかな」と思ってしまうのだ。すぐに「ああ、シュンは今保育園にいるんだっけ」と気づく。仕事を再開してしばらくすると、また、シュンの声が聞こえた気がして、手が止まる。1日に何度かこんなことを繰り返す。

私、今までいつもシュンの気配を感じながら仕事をしていたんだなあ。シュンが家にいたときは、仕事は全然はかどらなかったけど、ずうっと一緒にいたあの時間は、かけがいのない大事な時間だったんだなあと、離れてみて思う。急にシュンが恋しくなる。

慣らし保育が進まない

晴れたらこいのぼり
近所の方が「この辺りでは久しぶりのこいのぼりですね」と声をかけてくれました。雨の心配がない日は必ず出します

シュンの慣らし保育は、なかなか進まない。
先生「シュンちゃんはいろいろなことがよく分かっている子ですね。ママと離れて不安なのだと思います。もうしばらく早めのお迎えをお願いできると助かります」

園では、まだ泣いて過ごす時間が多いらしい。先生に抱っこやおんぶをしてもらうと安心して泣き止むのだという。いまだ早めに迎えに行く日が続いている。

朝、保育園に着いたときはご機嫌なのに、教室に入って先生に「お願いします」と引き渡そうとすると、ここぞというタイミングで、シュンは泣き出す。それも先生の顔を見て…。私は「今日はやっぱり連れて帰ります」と言いたくなるのを我慢して、シュンに声をかける。

ヨーコ「たくさん遊んでおいで。2時半には迎えにくるからね」
シュン「うえーん」

涙涙のお別れ

木登り
近所の公園に、木登りにちょうどよい木があります

ナツが保育園に入園したばかりのころ、同じように、涙涙のお別れが続いた時期があった。当時ナツは3歳。ナツにしがみつかれて、無理に引き離すことができず、30分くらい一緒にいたことがあった。でもママがそばいると、子どもはいつまでもママから離れられず、お友達の中に入っていけない。

それに気づいて、翌日からは、泣かれてもしがみつかれても、先生に「お願いします」と言って、仕事に行くようにした。ママが行ってしまうと、子どもはケロッとして遊び始めることも多いそうだ。ナツも、気づいたら、いつの間にか泣かなくなってたな。シュンもきっとそういう日がくるに違いない。

昨日、お迎えに行ったとき、シュンのいる部屋をそっとのぞいてみたら、シュンは機嫌よく先生に抱かれていた。「シュン、ただいま」と言って私が抱っこすると、シュンはニコニコと笑った。ゆっくりだけど、シュンはシュンのペースで、保育園の生活に慣れてきている感じがする。

新学期の疲れ

水遊び
天気のよい日曜日。水遊びを始めたアチャ

このところ、ナツが元気がない。学校のことを聞いても「うーん」とか「わかんない」とか答えることが多くて、学校での様子がわからない。お友達はできたというし、勉強もとくに困ってはなさそうだし、どうしたんだろう。2年生になって、クラスも先生もかわって、毎日が新しいことばかり。アンテナをいっぱいに張って、新しい環境に慣れようと、きっと頑張っているんだね。疲れているのかな。

そんなふうに思っていたある日。学校から帰ってきたナツ、遊びにも行かず、なんだか今日はごろごろしてるなと思って、体を触ってみたら熱い。熱を測ったら38度。疲れが出たのかな。その日は早めに寝かせた。

翌朝、熱は下がったが、体調が悪いようなら学校は休ませようと思って、ナツに聞いた。
ヨーコ「具合はどう? お家でごろごろしていたい気分なら、学校はお休みする?」
ナ ツ「でも、パパもママもお仕事お休みできないでしょ?」

夕べ、トシが「明日は、パパもママもお仕事お休みできないんだ」と言ったのをナツは忘れていなかった。確かに休みにくい日ではあったが、トシがそう言ったときにすかさず「大丈夫だよ。ナツのほうが大事だよ」とフォローしておくんだった。ああ、子どもにこんなセリフと言わせてしまって、反省。ナツ、ごめん。

知恵熱のあとは、ぐっと成長

庭のスイセン
庭のスイセンがきれいに咲きました

ヨーコ「心配いらないよ。ママがお仕事お休みするから大丈夫だよ」
ナツ、しばらく、うーんと考えて、
ナ ツ「やっぱり学校行く」
ヨーコ「わかった。じゃ、連絡帳に書いておくから先生に見せてね。もし、学校で具合が悪くなったら先生に言うんだよ。先生がママに連絡してくれるから。そしたらママ、学校に迎えに行くからね」

その日、学校から帰ってきたナツは、なぜかとても元気になっていた。赤ちゃんや子どもって、熱を出したあと、急に成長したように感じることがある。そういうのを「智恵熱」というらしい。今回のナツの熱も、智恵熱だったのだろうか。朝とは見違えるように明るい表情をしている。

本人に聞いても「べつに何もないよ」と言うが、そういえば、気になっていた目の周りのかさかさも落ち着いたようにみえる。ナツは体調が悪いと、目の周りの肌が乾燥してかさかさになるのだ。心と体はちゃんとつながっているんだよね。きれいになったナツの顔を見て、きっとナツの心も元気になったんだなと思えた。

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著者プロフィール
著者
根本陽子(ヨーコ)。1997年、初めての子どもを妊娠し、自分の望む出産を求めて情報を集め始める。これがきっかけとなり、「お産情報をまとめる会」(下記参照) のメンバーとなる。助産師さんに介助してもらい、長女は水中で、次女は陸で、3人目は再び水中で出産。長女の出産を機に勤務していた研究所を退職。その後フリーランスで辞典の執筆、英語講師、日本語教師、中学校の国語の講師など「ことば」に関する仕事をいろいろして、現在に至る。家族は、片付け好きで子どもの保育園の送り迎えも引き受ける夫・トシ、お姉ちゃんらしくそこそこしっかり育つナツ(小学5年)、自由奔放に心のおもむくままに育つアチャ・(小学2年)、そして2005年5月に生まれたシュンとの5人家族。(写真は、アチャが赤ちゃんだった頃のヨーコ)
お産情報をまとめる会
わたしのお産サポートノート
神奈川県と東京都町田市の産院情報「わたしのお産」、第二の母子手帳「わたしのお産サポート・ノート」を編集した、お母さんグループ。「サポート・ノート」は自分のこと、おなかの赤ちゃんのこと、医師・助産師との対話などを書きつづりながら妊娠生活を送るための本。ヨーコはここで、自分自身の記録を大公開しつつ、出産に向かう(実際の書き込み欄は小さくて、だれでも簡単に記録できるものです)。