第42回 11月3日は「いいお産の日」(3)〜お産のイメージトレーニング
小さな疑問や不安、全部聞いちゃおう
「いいお産の日」は、いよいよ午後のプログラムに入った。
子どもたちは、お弁当をペロリと平らげて、ナツとアチャはお店やさんの手伝いに。
シュンはやはり、私のそばを離れない。
さあ、これから私には大仕事が一つ待っている。「お産を語ろう」という小さなコーナーの司会だ。
産婦人科医の井上裕美先生と、歌手の中ムラサトコさんとのセッション。
井上先生は、フリースタイル出産で知られる湘南鎌倉総合病院の産婦人科医。『わたしのお産・サポートノート』の監修もしてくれている。毎年、講演してもらうのだが、大ホールの講演ではなかなか聞けない小さな疑問や不安を全部聞いちゃおうというコンセプトだ。
妊婦さんや赤ちゃんを抱いたママやパパたち20名くらいが集まってくれて、お座布団に座って井上先生と中ムラさんを囲んだ。
「最後に決めるのは、産むお母さん」
まずは、ただいま3人目妊娠中のおなかの大きな中ムラさんが、自身の妊娠、出産体験を話してくれた。中ムラさんは、1人目を自宅出産、2人目はおなかにいるときに心臓に病気があることが分かり、NICU(新生児集中治療室)のある病院で産んだ。
赤ちゃんに病気があるかもしれないと分かったあと、中ムラさんは井上先生に診察してもらう機会があった。そのとき井上先生に
「赤ちゃんの病気のことを考えると、下から自然に産むのは難しいかもしれない」
と言われたそうだ。でも
「最後に決めるのは、産むお母さんです」
と言ってもらったことで、そのあといくつかの病院でいろんな先生からいろんな可能性を聞いて、それを自分の中に一度全部受け入れて、でも最後は、納得して「自分で選んだ」と思えた、と話してくれた。
自分で選ぶことが大事
自分で選ぶって、すごく大事なことだと思う。医師がこう言ったから、じゃなくて、自分でそれを選んだと思えれば、納得のいくことも多いはず。医師と向き合ったとき、妊産婦はどうしても受身になりがちだけど、それじゃいけない。井上先生は、このときの中ムラさんとのことを覚えていないそうだが、きっといつでも妊産婦と対等の立場で、話を聞き、話をしてくれる先生なのだろう。こんな産婦人科医が増えるといいな。
その井上先生がしてくださった話の中で印象に残ったのが「お産のイメージトレーニング」。スポーツの世界では、成功する場面を何度も繰り返しイメージしたり練習したりすることで、実際の試合や大会でも成果を出すことができると、野球のイチロー選手やスケートの荒川静香選手を例に挙げて話してくれた。
お産も同じで「いいお産」をイメージすることが大事。
「お産が楽しかった」イメージを
井上先生「うちの病院に勤める助産婦さんたちは、自分の出産のときに安産の人が多いんです。『いいお産』を何度も見て、それがイメージトレーニングになっているんでしょうね」
ヨーコ 「ふつうの妊婦さんがいいお産のイメージを作りだすためにはどうしたらいいでしょうか。いいお産をした人の話を聞くとか、本を読む、なんていうのはどうでしょうか」
井上先生「それもいいですね」
出産の大変だった話を人から聞かされて、お産がこわくなった、という人がときどきいる。きっと「お産」=「大変」というイメージが結びついてしまったのだろう。
そんな人はぜひ「お産が楽しかった」「私はこんな素敵なお産をしたよ」という人を見つけて、話を聞いてほしい。周りで見つからない人は、私でよければいくらでもお話しますよ〜(笑)!
そして、ぜひ来年のお産カーニバルに来てください。きっと何か見つかると思いますよ。
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