3人目がやってきた!

第5回ナツの腹痛(妊娠11週)

「ナッチャン、おなかいたい」

箱根神社
お願い
上/箱根神社に行きました。奈良時代に創建されたというだけあって風情たっぷり。
下/ナツ、何をお願いしているのかな。

つわりで気分が悪いとき、子どもたちに
「ママはおなかが痛いから先に寝るね」と言って、布団に入った。
トシも「ママはおなかが痛いから休ませてあげようね」と言って、私が寝たあとの子どもたちの面倒を見てくれた。

そんなことが何度かあった後、ナツが
「ナッチャン、おなかいたい」と頻繁に言うようになった。

ヨーコ「トイレ、行ってきてごらん」

トイレからもどったナツに「出た?」と尋ねると、
「出た」と答えるときもあるが
「出なかった」と答えるときも多い。

そもそも腹痛を訴えるのが、朝起きたときだったり、アチャと元気に遊んでいるときだったり、寝る前だったりと、いろいろなのだ。
食事や便意とあまり関係がないように感じた。

もしかして、私の「おなかが痛い」がナツに影響しているのではないかと思い始めた。

子どもは案外デリケート

以前は「子ども」は、走り回り、笑い、疲れを知らない、いつでも元気な存在だと思っていた。
が、それは誤った認識だった。

たとえば、ナツもアチャも、ちょっとした気温の変化で湿疹が出たり、昼間お友達といつも以上に遊んだ日の夜は、夜泣きで何度も目を覚ましたりする。

子どもは心も体もとても敏感でデリケートなのだ。子どもと一緒に生活をするようになって、このことに気づいた。

私は実際おなかが痛いわけではない。つわりのせいで気分が悪いのである。
でも子どもたちに私の体調不良を分かりやすく理解してもらおうと「おなかが痛い」という言葉を使っただけなのだ。

ママの一大事!

ナツは、ママの「おなかが痛い」ことを不安に思っているのではないか。

大人はそれがつわりのせいだと知っているから特別な心配はしないが、事情を知らないナツにとって、母親の腹痛は一大事なのかもしれない。

だとしたら、ナツの腹痛は精神的なものということになる。
そうならば、子どもたちにも早く妊娠の事実を伝えてやったほうがいいのではないか。

今回の妊娠が分かったとき、子どもたちへの報告は安定期に入ったら(流産の可能性が低くなったら)と夫婦で決めた。それは主にナツに対する気遣いだった。

樹齢1000年以上
樹齢1000年以上の杉。苔むした幹に歴史を感じます。

6歳のナツは、かなり正確に大人の話を理解できるようになっている。赤ちゃんができたことを知れば、保育園のお友達や先生をはじめ、周りの人にきっと話したいだろう。

けれど、私の体調はお世辞にも良好とは言えない。万一妊娠がうまく継続できなかったときのことを考えると、周りの人たちに知らせるのはもうすこし後にしたいという気持ちが、トシにも私にもあった。

かといって、ナツに口止めするのはかわいそう。そこで、安定期に入ってからということにしたのだった。

病気かも?お医者さんへ

トシと相談して、しばらく様子をみることにしたが、ナツの腹痛は一向に治まらない。保育園でも「おなかが痛い」と訴えることがあるらしい。

親の思い込みで大きな病気を見逃したら大変だ。念のため近所のお医者さんにナツを診てもらうことにした。私の話を聞き、ナツのおなかを診て、医師は言った。

医師「腸がごろごろとよく動いています。腸が活発に動くと、それを痛みと感じることがある。心配はないと思うから、様子をみましょう。今日は薬もとくに出しませんね」

心配な病気ではないと分かり、とりあえず一安心。

お風呂でじっくり親子の会話

食べられてしまいそう
何をつくろうかな
上/アチャが恐竜に食べられてしまいそう。動物園にて
下/エプロンつけて、工作とお絵描き。何をつくろうかな。

しばらくして、ナツと二人でお風呂に入ったときのこと。湯船につかりながら話をした。

ヨーコ「ナツはおうちや保育園で何か嫌なことがあるかな?」
ナ ツ「ないよ」
ヨーコ「ナツはどうしておなかが痛くなるのかな?」
ナ ツ「うーん。わかんない」
ヨーコ「おうちや保育園で嫌なことや心配なことがあったら、パパやママや先生に話すんだよ」
ナ ツ「うん、わかった」

それから、ナツはヨーコのおなかをさわった。

ナ ツ「ママ、おなか痛い?」
ヨーコ「今は痛くないよ。ナツは?」
ナ ツ「ナッちゃんも痛くないよ。ママとナッちゃん、おなか痛いの、おんなじだね」

まるで同じであることがうれしいかのように、ナツは「おんなじだね」と言った。

ナツ、そこには赤ちゃんがいるんだよ。そうナツに話してやりたいと思った。

ただいま妊娠11週。
そろそろナツとアチャに話してもいい時期かもしれない。

近いうち家族4人が揃った場で話してやろうと、このときヨーコは決めたのだった。

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著者プロフィール
著者
根本陽子(ヨーコ)。1997年、初めての子どもを妊娠し、自分の望む出産を求めて情報を集め始める。これがきっかけとなり、「お産情報をまとめる会」(下記参照) のメンバーとなる。助産師さんに介助してもらい、長女は水中で、次女は陸で、3人目は再び水中で出産。長女の出産を機に勤務していた研究所を退職。その後フリーランスで辞典の執筆、英語講師、日本語教師、中学校の国語の講師など「ことば」に関する仕事をいろいろして、現在に至る。家族は、片付け好きで子どもの保育園の送り迎えも引き受ける夫・トシ、お姉ちゃんらしくそこそこしっかり育つナツ(小学5年)、自由奔放に心のおもむくままに育つアチャ・(小学2年)、そして2005年5月に生まれたシュンとの5人家族。(写真は、アチャが赤ちゃんだった頃のヨーコ)
お産情報をまとめる会
わたしのお産サポートノート
神奈川県と東京都町田市の産院情報「わたしのお産」、第二の母子手帳「わたしのお産サポート・ノート」を編集した、お母さんグループ。「サポート・ノート」は自分のこと、おなかの赤ちゃんのこと、医師・助産師との対話などを書きつづりながら妊娠生活を送るための本。ヨーコはここで、自分自身の記録を大公開しつつ、出産に向かう(実際の書き込み欄は小さくて、だれでも簡単に記録できるものです)。