第6回 妊娠報告(妊娠13週)
うれしくて顔にでちゃった
妊娠12週を過ぎるころになると、なんとなくおなかもふっくらとしてきた。つわりも落ち着いてきたし、そろそろナツとアチャにも赤ちゃんができたことを話そう。
次の日曜の夕食後、食卓で子どもたちに話を切り出した。
トシ「ナツ、アチャ、これから大事な話があります。最近、ママのおなかが大きくなったと思わない?」
ナツ「太ったんじゃない? 運動してないから」
トシとヨーコ、顔を見合わせて苦笑い。
トシ「実はママのおなかに赤ちゃんがいます」
ナツはにたにたと薄笑い。うれしくて顔に出ちゃったという表情。
ヨーコ「ナツ、どんな気持ち?」
ナツ 「うれしくてドキドキしちゃう」
そっか、ドキドキしちゃうのか。「うれしい」という言葉を聞いてヨーコもうれしくなった。
「お姉ちゃん」という立場
一方のアチャはコメントなし。
3歳半を過ぎてだいぶ話が理解できるようになっているアチャだが、この話は難しかったのかな。
いや、分かっているけれど「私には関係ない」という態度を示しているようだ。
ナツはすでにアチャのお姉ちゃんだから、もう一人妹か弟ができたとしても「お姉ちゃん」という立場は変わらない。
しかし、これまで「末っ子」として育ってきたアチャにとって、赤ちゃんが生まれるということは一大事だ。気持ちが分からなくもない。
そこで、アチャにはこちらから積極的に赤ちゃんの話をすることはせずに、アチャが自分から興味を示すまで放っておくことにした。
態度保留だね
数日後、お世話になっている助産婦さんにこの話をした。
助産婦さん「アチャちゃんは態度保留だね」
そうそう、まさにそんな感じ。
アチャは赤ちゃんの存在を受け入れることができるのだろうか。それとも…。
さて、子どもたちへ妊娠報告をした翌日、ナツは保育園に行くと、早速お友達やお友達のお母さん、先生に「ママのおなかに赤ちゃんがいるんだよ」と報告したらしい。
ナツはしばらくのあいだ、会う人会う人に赤ちゃんの話を繰り返した。うれしいという気持ちがあふれているようだった。
あのね
その影響なのだろうか、あるいはアチャの心が赤ちゃんを受け入れたのか。
1週間くらいたったある朝、ナツとアチャを保育園に送っていき、朝のしたくをしていると
アチャ「あのね、ママのおなかにね、あかちゃんいるの」
ナツと同じセリフを、同じクラスのお友だちのママに言ったのだ。
お友だちのママ「そう、よかったね。アチャちゃん、お姉ちゃんになるのね」
アチャ「うん」
お友だちのママとアチャとのやりとりをそっと聞きながら、大きな壁を一つ乗り越えた気がした。
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