第52回 おっぱい、バイバイの日《後編》
赤ちゃんらしい名残
シュンは夕方保育園から帰宅した後も「ぱいぱい」と言わない。
たまたま欲しくないのか、それとも、もういらないのか。このままおっぱいを終わりにしようか。たぶん、いつも通り授乳すれば、何事もなかったかのように、シュンはおっぱいを飲むと思う。
はっきりと心は決まらなかった。私の中に、まだ名残惜しい気持ちが確かにある。赤ちゃんから子どもへと成長しつつあるシュンの、唯一赤ちゃんらしい名残をまだ手元に残しておきたい。そんな気持ちだったのかもしれない。でも…
ちょうどいい時期なのかも
おっぱいを飲むために夜中に何度も起きるシュンは、つまりは眠りが浅い。昼間の活動が活発になり、ごはんもたくさん食べて、コップを使って水分を取ることもできるようになっている。夜中におっぱいを飲むよりも、ぐっすり眠れたほうがいいのではないか。そんな気持ちも最近持ち始めていた。
シュンのためにも、ちょうどいい時期なのかもしれない。
できるところまでやってみよう。強行はせず、欲しがって泣き叫んだり、眠れなかったりしたら、そのときはおっぱいをあげればいい。臨機応変に対処しよう。
シュン、シロツメクサを両手に、にっこり |
庭のヒマワリ |
えっ、おっぱいくれないの?
その晩(卒乳2日目)、布団に入ると、この日初めてシュンはおっぱいを欲しがった。
シュン「ぱいぱい」
ヨーコ「ぱいぱい、バイバイね。ないないしようね」
シュン「(えっ、おっぱいくれないの?という感じで)うぇ〜ん」
突っ伏して悲しがるシュンの背中をトントンとたたいてやっていると、シュンはスーッと寝息を立て始めた。その間、ほんの数分。えっ、もう寝ちゃったの? あまりのあっけなさに私のほうがびっくり。
夜中に一度「ぱいぱい」とぐずったときも、背中をトントン。またスーッと寝てしまった。そして朝を迎えた。
アチャの七夕の短冊「さかあがりができますように」。夏休み、早起きして公園で練習 |
ナツが練習に付き合ってくれることも。練習の合間にちょっと遊ぶ二人 |
おっぱいにさよならができた
3日目の夜も4日目の夜もそんな感じで過ごした。
卒乳7日目、シュンは「ぱいぱい」ということばを1度も言わずに過ごした。昼寝はお気に入りのビデオを見ながらごろごろしているうちに寝て、夜は布団の上で、なにやらごにょごにょと好き勝手にしゃべりながら、やはりごろごろと転がっているうちに就寝。
ナツ、アチャ、シュン、3人ともおっぱいをやめるきっかけは同じでも、その過程はそれぞれ。シュンが一番無理なく、自然におっぱいにさよならができた気がする。
体中の神経がおっぱいに
さて、私はと言うと、ここ1年くらいは夜しか授乳していなかったとはいえ、急に飲ませなくなったことで、おっぱいが痛くなった。ぱんぱんに張るというのではないけれど、どこかが詰まって炎症を起こしているようだ。
まず、卒乳3日目に右のおっぱいが痛くなった。助産院でマッサージしてもらったらよくなった。ひとまずほっ。
6日目、今度は左が痛くなった。痛みは徐々にひどくなる。そのうちちょっとさわっただけでも「痛っ!」と声をあげたくなる痛みになった。まるで体中の神経がすべて、おっぱいの痛い部分に集中している感じだ。
以前に乳腺炎で熱が出たことがあるが、そのときのような嫌な感じの痛み。うー、こわー!
助産師さんの魔法の手
7日目の朝、やっぱり熱が出た。38度。おっぱいは痛いし、体はしんどい。朝一番に助産院に電話を入れ、マッサージをお願いした。
助産院に着くと助産婦さんが声をかけてくれた。
助産婦さん「熱あるの?」
ヨーコ 「はい、38度」
助産婦さん「冷やした?」
・・・・・そっか、冷やせばよかった。忘れていました、助産婦さんに教わった知恵。キャベツの葉のシップ。
おっぱいが熱をもって痛いとき、痛いほうにキャベツの葉っぱ(キャベツの丸みがおっぱいの形にちょうど良い)を当てると、程よく冷やしてくれるそうだ。もちろん保冷材などを当ててもいい。
マッサージを終えると、キーンとした痛みはやわらいでいた。助産婦さんの手は、ほんとうに魔法の手だ。翌日には熱も下がり、痛みもかなりひいた。
シュンはホースと |
水鉄砲が大好き |
シュンと私の「おっぱいごっこ」
卒乳2週間目。「おっぱいマッサージは今日で最後かな、いよいよ本当に卒乳だ」と感慨深げに助産院へ行くと、
助産婦さん、マッサージしながら「う〜ん、(おっぱい)まだ元気ですね」
私のおっぱいがその製造をやめるにはもう少し時間がかかりそうだ。
結局、シュンより、私のおっぱいのほうが卒乳に時間がかかった。子どものほうが適応力があるってことなのか(笑)。
あれから、2ヶ月。シュンはときどき「おっぱいごっこ」をする。私のシャツをめくり「ぱいぱい」と言うので、私が「飲む?」と聞くと、恥ずかしそうにチュッとまねっこだけして「わははっ」と笑う。
たまにはプールの中でお昼ごはん |
流れるプールをつくるぞー! オー! |
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