3人目がやってきた!

第9回 春、いろいろ(妊娠29週)

パパとママが結婚した日

裸で遊ぶナツとアチャ
裸になってお布団で遊ぶナツとアチャ、あきれる私。おなかもだいぶ立派に

3月に入り、だいぶ暖かくなってきた。冷え性の妊婦にとっては本格的な春が待ち遠しい。

トシと結婚したのも3月だった。あれから8年が経った。

といってもこれまで特別なお祝いをした記憶はない。それどころか夫婦ともにその日を忘れていることも多かった。何日か経ってから「ああ、そういえば15日は結婚記念日だったね」みたいな(笑)。

ナツが生まれ、アチャが生まれ、今は結婚記念日よりも子どもの誕生日のほうが私たち家族にとって大切な日になっている気がする。

家族っていいなあ

ところが、今年はなぜかトシも私もその日を覚えていた。夕飯まではいつもと変わらぬ日だったが、食事の後、トシが冷蔵庫からワインを取り出した。トシはワイン、ナツとアチャと私は麦茶で「乾杯」。
ト    シ「今日はパパとママが結婚した日なんだよ」
ナ   ツ「ふーん」
アチャ「…」

子どもにとっては別にどうということはないらしい。でも、私はなぜだかとても幸せな気持ちに包まれた。この感じは何だろう。

家族っていいなあ。ありきたりだけれど、そんなことばが頭に浮かんだ。

あと2ヶ月でおなかの赤ちゃんも生まれてくる。そうしたらもっともっと楽しい、もっと幸せな家族になる気がする。

卒園おめでとう

卒園おめでとう
夢
上/ナツ、卒園おめでとう!
下/夢は「保育園の先生」。舞台の上で、この絵を見せながら大きな声で言えました

さて、春は行事も目白押し。結婚記念日の翌日はナツの保育園の卒園式。紺色のブレザーでビシッと決めたナツは、体も大きくなったけれど、それ以上に大きく成長したように見えた。

式では、一人一人名前を呼ばれ、修了証書を受け取ると、舞台の上から客席に向かって将来の夢を語る。

ナツ「ネモトナツです。将来の夢は保育園の先生になることです」

素敵な先生たちに見守られて、楽しかったんだろうね。ナツ、4年間元気に通ってくれてありがとう。そして、卒園おめでとう。

生徒たちとの距離感が縮まった

この春、別れも待っている。昨春から勤める中学校の講師の仕事は、出産準備のため年度末でやめることになる。

中学校に勤めるのは初めてだったから、最初のころは毎日の授業をこなすのに必死だった。なんとか授業をこなせるようになってくると、今度は生徒たちとのコミュニケーションがうまくいかずに悩んだ。人間関係を築くことのほうが難しいと改めて感じた。

振り返ってみると、妊娠したことで生徒たちとの距離感が縮まった気がする。

廊下を歩いていると生徒たちが「せんせー! 荷物持ってあげる」 と走ってきたり、提出されたプリントの端っこに「先生、がんばってね」と書いてあったり、授業中あまり発言しない生徒が授業のあと「先生、無理しないでくださいね」とさりげなく言ってくれたり、やさしい気持ちに何度も触れて、心が温かくなった。

みんな、どうもありがとう。

自分の家で産む

安定期と言われる時期は過ぎ、いよいよ妊娠8ヶ月に突入。夜中に目が覚めるし、トイレも近いし、恥骨のあたりも痛い。体は出産に備えて準備を始めたようだ。

実は今ちょっとした悩みがある。ナツとアチャは助産院に入院して出産したが、この助産婦さんは産婦の自宅に出張もしてくれる。助産院は助産婦さんのご自宅だから、お友達のおうちに遊びに行ったような感じで、とてもリラックスして出産できるのだけど、自分の家で産むというのを一度経験してみたい気もする。実はトシにはまだ相談していない。

ナツに相談したら
ナツ「ナッちゃんはママがおうちにいてくれたほうがいいなあ」
と言っていた。

うーん、どうしよう。もうしばらく悩むことになりそうだ。

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著者プロフィール
著者
根本陽子(ヨーコ)。1997年、初めての子どもを妊娠し、自分の望む出産を求めて情報を集め始める。これがきっかけとなり、「お産情報をまとめる会」(下記参照) のメンバーとなる。助産師さんに介助してもらい、長女は水中で、次女は陸で、3人目は再び水中で出産。長女の出産を機に勤務していた研究所を退職。その後フリーランスで辞典の執筆、英語講師、日本語教師、中学校の国語の講師など「ことば」に関する仕事をいろいろして、現在に至る。家族は、片付け好きで子どもの保育園の送り迎えも引き受ける夫・トシ、お姉ちゃんらしくそこそこしっかり育つナツ(小学5年)、自由奔放に心のおもむくままに育つアチャ・(小学2年)、そして2005年5月に生まれたシュンとの5人家族。(写真は、アチャが赤ちゃんだった頃のヨーコ)
お産情報をまとめる会
わたしのお産サポートノート
神奈川県と東京都町田市の産院情報「わたしのお産」、第二の母子手帳「わたしのお産サポート・ノート」を編集した、お母さんグループ。「サポート・ノート」は自分のこと、おなかの赤ちゃんのこと、医師・助産師との対話などを書きつづりながら妊娠生活を送るための本。ヨーコはここで、自分自身の記録を大公開しつつ、出産に向かう(実際の書き込み欄は小さくて、だれでも簡単に記録できるものです)。